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イントゥ・ザ・ウッズ


2014年  アメリカ  125分

監督
ロブ・マーシャル

出演
メリル・ストリープ
エミリー・ブラント
ジョニー・デップ、クリス・パイン
ジェームズ・コーデン
アナ・ケンドリック
リラ・クロフォード
ダニエル・ハットルストーン
マッケンジー・マウジー

   Story
 おとぎ話の主人公たちのその後を描いた、ブロードウェイでトニー賞を受賞した人気ミュージカルを、『シカゴ』『NINE』などのロブ・マーシャルが映画化。

 魔女(メリル・ストリープ)に呪いをかけられたために、長年子供を授からないことに悩んでいるパン屋の夫婦(ジェームズ・コーデン、エミリー・ブラント)。

 呪いを解くためには、赤いずきん、黄色い髪、白い牛、黄金の靴、の4つを森から持ち帰るように、魔女に命令される。
 2人は子供を授かるという「願い (wish)」を叶えようと森の奥へ入っていく。

 一方赤ずきん(リラ・クロフォード)、ラプンツェル(マッケンジー・マウジー)、ジャック(ダニエル・ハットルストーン)、 シンデレラ(アナ・ケンドリック)もそれぞれの「願い (wish)」を持って森に足を踏み入れていて・・・。


   Review
 おとぎ話といえば、「シンデレラ」も「白雪姫」も、ヒロインは心優しく可憐で健気(けなげ)で、そして肝心なのは薄幸なこと。 散々いじめられて苦労して、そして最後にハンサムな王子さまと結ばれる。
 「そして王子さまとお姫さまは幸せになりましたとさ。めでたし、めでたし」で終わるのが定番だ。

 でも人生はそれからも続く。どんな「その後」が待ってるんだろう・・・。
 ちょっと覗いてみたい気がしないではない。

 そんな好奇心に応えてくれるミュージカルだ。
 とはいっても、本作に限っていえば踊りはない。歌も朗々と歌い上げる (個人的にはちょっと気恥ずかしい) ので はなく、ほとんど台詞代わりといっていいようなさり気なさだ。
 (ミュージカルとしての) 形式、(おとぎ話の「その後」を描く) 内容、ともに従来の形、あるいは夢を壊すちょっと変わった映画だ。

 ストーリーのベースになる子供に恵まれないパン屋の夫婦の物語は “ラプンツェル”、それに “赤ずきん” “ジャックと豆の木” “シンデレラ” が組み合わされて、 登場人物がみんな深い森に入り、そこで右往左往、出会ったり、行き違ったりする。

 可笑しいのは、登場人物たちが従来の物語と違って、みなちょっとずつ性格が悪いこと。
 赤ずきんは食い意地が張っていて、パン屋からくすねた籠いっぱいのパンを、森のおばあちゃんの家に行き着くまでにあらかた平らげてしまう。 ジョニー・デップ扮するオオカミの妖しい色気にも全然たじろがない。

 シンデレラはお城のパーティを毎晩、必ず途中で抜け出して、王子(クリス・パイン)に後を追わせる。まるで王子の気を引くために計算してるみたい。 王子はシンデレラを追いかけながら、森で出会うパン屋の女房に気が惹かれ、女房の方もハンサムな王子に満更でもない。

 パン屋の主人はジャックを騙して白い牝牛を豆5粒と交換し、ジャックは後で引き取りにくるからと牝牛に約束 し、それを盾にパン屋からむりやり牝牛を取り返す。
 パン屋の事情も分からなくはないけど豆5粒はあんまりよ、でもジャックも強引だな・・・、とどちらにも肩入れはためらっちゃう。

 ヨーロッパは近世まで深い森におおわれて、一旦その中に飲み込まれると、容易に抜け出ることが出来なかったそうだ。 「ロビン・フッド」の物語もそんな中で生まれた。

 そんなことからか “森” は人の深層心理を表すことが多いという。 そこでは日常の暮らしでは隠したり抑えたりしている願い (欲望) が解き放たれ、人は心迷って、一旦足を踏み入れるとなかなか抜け出すことが出来ない。
 登場人物たちが序盤、それぞれの “願い (wish)” を歌いながら森に入っていくのが意味深に思える。

 魔女ですら普通の人と同じく叶えたい願いがあって、その実現に必死になるところが可笑しくもいじらしい。 おまけに願いが叶って若さを取り戻したら、代わりに魔力をなくしてしまうのだ。

 そんなものでしょうね、何もかもがうまくいって「めでたしめでたし」なんてあるはずがないもの。
 これが現実。甦った現代のおとぎ話はちょっとほろ苦い後味が効いていた。
  【◎△×】7

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