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ウォール・ストリート


2010年  アメリカ  122分

監督
オリヴァー・ストーン

出演
マイケル・ダグラス
シャイア・ラブーフ
キャリー・マリガン
ジョシュ・ブローリン
イーライ・ウォラック
フランク・ランジェラ

   Story
 『ウォール街』から23年、オリヴァー・ストーン監督とマイケル・ダグラスが再びタッグを組んだ続編。 若き電子取引トレーダーと元カリスマ投資家が繰り広げるスリリングな駆け引きを、金融不安の世相を背景に描く。

 2001年、8年の服役を終えたゴードン・ゲッコー(マイケル・ダグラス)が出所する。
 それから7年、電子取引トレーダー、ジェイコブ・ムーア(シャイア・ラブーフ)は、勤務先の投資銀行が突然破綻し、 恩人と慕っていた経営者ルー(フランク・ランジェラ)が自殺する。

 すべては金融界の黒幕ブレトン・ジェームズ(ジョシュ・ブローリン)のもくろみと知ったジェイコブは、 婚約者ウィニー(キャリー・マリガン)の父親であるゲッコーに近づき、ブレトンへの復讐計画を持ちかける。

 ゲッコーは長年疎遠の娘ウィニーとの仲を仲介することを条件に、ジェイコブに手を貸すことにするが・・・。


   Review
 若い頃の主婦仲間で、小豆相場に手を出して大損こいた人がいた。取り戻そうとさらに金をつぎ込み、ますます損が大きくなる。その悪循環だったらしい。 もっとも主婦感覚の大損だから、何十万レベルの話ではあるけれど。

 株も相場も興味がなく、もちろん知識もない私には、どこぞの世界の話と思っていた相場話が身近な友人から出て、 青天の霹靂(へきれき)だった記憶がある。

 そんな私なので、金融を扱った映画は経済用語が分からず、登場人物たちが繰り広げる権謀術数の何がどうなったためにこうなってしまったのか、 がほとんど理解出来ない状態に陥ることが多い。

 それでもけっこう面白く見てしまうのは、そこに映し出されるあからさまな欲望に、共感はしないまでも、人間の本質が垣間見える気がするからだろう。

 前作『ウォール街』(87) はマイケル・ダグラス扮するカリスマ的投資家ゴードン・ゲッコーが圧倒的な存在感で、 彼をめぐる金融界の駆け引きの目まぐるしさは、息苦しくなるほどだった。

 彼に憧れる若き金融マンがその手法を身に着けてのし上がっていくものの、やがて勤勉に生きる父親の価値観に目覚め、ゴードンを乗り越えていく姿が印象的だった。

 本作は、インサイダー取り引きで服役していたゴードンが出所し、さらに7年経った2008年が舞台だ。 世界を震撼させたサブプライムローンによる金融市場破綻の話も顔を覗かせる。

 主人公は電子取引トレーダーのジェイコブ・ムーア。扮するシャイア・ラブーフはハンサムだけど、 端正すぎて、馬の目を抜く金融界を生きるにはちょっと線が細いかな・・・。

 ゴードンに近づく理由も、恩人の投資銀行社長を自殺に追い込んだ金融界の黒幕ブレトンに復讐する方策を得るた め、という私情がらみ。乾いた非情な金融界ものという先入観が覆されて、何やら人間ドラマ風だ。

 それでもゴードンの登場で一気に映画の空気が変わるのかと思ったら、ダグラスさん、眉間に深いシワが刻まれ、はぁー、歳を取りましたねー。
 往年の鋭さが消えて、長年疎遠だった娘ウィニーとの和解に勤しむ様子に戸惑ってしまう。

 ウィニーを演じるキャリー・マリガンが、父を許したいけどどうしてもこだわりが溶けない、愛するジェイコブの子を宿しながら彼に別れを告げる、そんな複雑な役回りを演じてなかなかいい。

 ラスト近く、スイスの銀行に預けていた1億ドルをウィニーとジェイコブを利用してクリーニングし、 そのままドロンしてしまう辺りにゴードンの往年の凄みが顔を覗かせて、ちょっとワクワクさせられる。

 でもこれも孫がらみで心情的に解決し、全体的には “金融” の装いをした “家族” ドラマの印象だ。
 前作『ウォール街』のような金融ドラマの緊迫感を期待すると物足りない反面、ストーリーは追いやすかったともいえる。
  【◎△×】6

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