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300 <スリーハンドレッド>


2007年  アメリカ  117分 

監督
ザック・スナイダー

出演
ジェラルド・バトラー
レナ・ヘディ
ドミニク・ウェスト
ヴィンセント・リーガン
マイケル・ファスベンダー
ロドリゴ・サントロ

   Story
 わずか3300人のスパルタの兵士が100万のペルシアの大軍を迎え撃つ伝説的な史実 “テルモピュライの戦い” をもとにした、 フランク・ミラーの人気グラフィック・ノベルの映画化。

 紀元前480年、スパルタに大帝国ペルシアからの使者が到着する。
 それは大王クセルクセス(ロドリゴ・サントロ)への服従の証しを立てるよう迫るものだった。

 スパルタ王レオニダス(ジェラルド・バトラー)はこれを蹴って、大国ペルシアと戦うことを決意するが、デルフォイの神託は「戦ってはならず」だった。

 評議会もこれを支持したため、レオニダスは精鋭300名のみを率いてペルシアの100万の大軍に立ち向かうことになる。

 海に面した峻険な山の狭路「灼熱の門」に布陣して、ペルシア軍を待ち受けるレオニダスと兵士たち。こうしてテルモピュライの戦いが始まった・・・。


   Review
 本作と勘違いして続編の『〜帝国の進撃〜』を先に見てしまい、映像が凄いという公開当時の評判もあって、それなりに気になっていた。私ははじめて、夫は2度めの鑑賞。

 まず評判の、そして夫もお薦めその映像だけれど、全体がセピアがかった渋いベージュや青灰色の彫りの深い色調はバッチリ私好み、 古代絵画がそのまま眼前に現われたようだ。

 構図がまた素晴らしくて、夕日を背にマントを風になびかせて崖上に勢揃いする兵士たち、あるいはラストのスパルタ軍の全滅、など目を奪われる構図が続出する。

 戦闘場面も迫力満点だ。緩急のついたスローモーションを組み合わせてリズムを作り出し、兵士たちが幅広の剣を ぶった切るように振り回す。あんなに切って刃こぼれを起こさないか、なんて思っている暇もない。

 日本刀のような優雅さは微塵もなく、ただただ力任せ。
 そこに『〜帝国の進撃〜』でお馴染みの (あ、順序が逆か) 血糊がびゅんびゅん飛ぶ。

 可笑しかったのは、「灼熱の門」でのペルシャ軍との激闘だ。
 小勢が大勢と戦う時は平原での会戦はご法度、山中や峡谷などの隘路に誘い込んで、ゲリラ戦か集中戦に持ち込む、というのが定法だ。 レオニダスはどういう戦略を繰り出すんだろう、と思ったら・・・。

 スパルタ軍は盾を並べて崖下の狭路の入り口を塞ぎ、敵が近づくのを待つ。ペルシャ軍が迫ってくる。スパルタ軍はひたすら待つ。両軍が鼻先まで接近する・・・。
 突如スパルタ軍が「押せぇー! 押せ、押せぇー!」と盾でペルシャ軍を押し戻し始めたのには驚いた。

 なにしろスパルタ軍は (本来は重装歩兵なんだろうけど) 映画的な見栄え(?)のせいか全員が上半身は半裸なのだ。これぞまさに文字とおりの肉弾戦。 汗臭い男たちの押しくら饅頭だ。

 ペルシャ軍のモンスターみたいな巨人や奇妙に武装されたサイやゾウ、なかでも奇怪なマスクをつけた「不死の軍団」は大受けだ。 マスクを飛ばされたら、下から出てきた顔がおんなじ。これじゃマスクを付けんでも変わらんやろ、とか思ったりして。

 映像的には魅力があり戦闘シーンも楽しめるものの、やはりこればかりでは飽きが来る。ストーリーにしっかりした芯がほしい。 なんといっても核はレオニダス、「屈服も後退もしない」と “死ぬことと見つけたり” の《葉隠》みたいな気合ばかりで、 戦略らしいものが見あたらないのに物足りなさを感じる。


 たとえば、せむしのエフィアルテスが「背後に抜け道がある」と進言してきた時、その意味の重大さに気づき、きちんと耳を傾けるべきだったと思う。

 王妃ゴルゴ(レナ・ヘディ)が夫を助けようと心を砕くのはいいとして、奸臣セロン(ドミニク・ウェスト)を籠絡するのにいきなり色仕掛けはないでしょう。 しかもそれを逆手に取られて、術中にまんまと嵌ってしまうしまうんだもの、曲がなさすぎるなぁ〜。

 隊長(ヴィンセント・リーガン)が息子の死に取り乱すのもちょっと白けた。生まれたときから選別され、戦士として育つスパルタの男たちだ。 戦場の死は覚悟の上と思うだけに、こういうときこそ気合で乗り越えてほしかったと思う。
 映像・構図の素晴らしさに7点、ストーリーの物足りなさに5点、中を取って6点献上です。
  【◎△×】6

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