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2018年  アメリカ  102分

監督
アニーシュ・チャガンティ
出演
ジョン・チョー
デブラ・メッシング
サラ・ソーン
ジョセフ・リー
ミシェル・ラー

   Story
 突然失踪した娘の行方をSNSを手掛かりに探そうとする父親の姿を描いたサスペンス・ミステリー。
 ストーリーが全編パソコンの画面で進む手法が話題となり、サンダンス映画祭で観客賞を獲得した。

 デヴィッド(ジョン・チョー)は妻(サラ・ソーン)に先立たれ、高校生の娘マーゴット(ミシェル・ラー)と2人暮らしだ。

 ある日勉強会に出かけたはずのマーゴットが帰宅せず、家出なのか誘拐なのか分からないまま時間が経過する。
 弟ピーター(ジョセフ・リー)に相談すると、思春期にはありがちなこと、心配することはないという。

 不安なデヴィッドは警察に失踪届けを出し、女性捜査官ローズ・マリーヴィック(デブラ・メッシング)が担当となる。 その一方で、デヴィッドはマーゴットが利用しているSNSにログインして手掛かりを探そうとする。


   Review
 全編がPCのモニター画面だけで展開するというのが話題になったので、ちょっと躊躇した。斬新な手法を試みる監督はえてして独りよがりになり易い。 分かりにくんじゃないかな、と思ったのだ。でもまったくの杞憂だった。

 例えば、主人公のデヴィッドが誰かとPC画面を通して話す時のカメラは会話が終わってもスイッチは入ったままなので、その後の彼の行動や日常がそのまま画面に映し出される。 そのカメラもズームインやズームアウト、さらにマルチ画面に切り替わったりするので、変化が多く飽きさせない。

 それだけではない。PCならではの強みがある。家族アルバムがPCの中にファイルとして保存されていることだ。

 幼児から少女へと成長して行く娘のマーゴット、やさしく美しい妻パムが元気だった頃、そして病に倒れ闘病する姿・・・、 それらが写真やホームビデオで保存され、そしてPC画面に再生される。
 スイッチ・オンのままのPCカメラには、それを見つめるデヴィッドの表情も・・・。


 PCやインターネットは情報収集・発信のためのツールという印象が強い私だけど、思いのほか心情に触れてくるのは新発見だった。

 マーゴットがスケジュール管理のカレンダーに「ママ退院」と予定を書き込む。いそいそと嬉しげだ。
 けれどそれはすぐに後ろの日付に移動される。あー、まだよくなってないんだ、と思う間もなくさらに後ろの日付に移動され、そして削除される。亡くなったのだ。
 マウスの操作は機械的、でもそこに込められたマーゴットと画像を再生するデヴィッドの思いがリアルに伝わってくる。

 マーゴットが失踪した後、デヴィッドは自分が娘のことを何も知らないことを悟るのだけど、これってどの親子でも大方そうしたものじゃないか、と身につまされる。
 思春期の後半、精神的に親から自立する年頃になると、子供は秘密という形で自分の世界を持つようになるし、親 もあまりそれに立ち入らないほうがいい。

 とはいえ一旦ことが起きた時、子供の友人や興味・行動の範囲などほとんど何も知らないことに気づいたら、やっぱり愕然とするだろうとは思う。

 マーゴットと連絡が取れなくなり、キャンプに行ったことも知らず (友達の母親から「あら、ご存じなかったの?」的なことを言われ、 「は? いえ、知ってます」的な返事をするデヴィッドの親としての見栄にクスッとしながらも共感)、 でもじつはそのキャンプにも行っていないことが分かり、ピアノのお稽古も半年前に止めていた・・・。
 マーゴットはどこへ消えたのか、デヴィッドの狼狽と不安、と後半はミステリーとしての面白さに引き込まれる。

 デヴィッドがマーゴットのSNSにログインして (パスワードが分からなくて、新たに設定したりの面倒臭さにも大いに共感) 徐々に分かってくるのは、 彼女がいまだに母パムの死から立ち直っていないことだ。

 デヴィッドは自らの悲しみのために妻の死から目をそらし、娘と悲しみを共有してこなかった、 それが知らず知らずのうちに親子の距離を作っていたことに今更ながらに気づくのだ。
 家族の絆という普遍的なテーマがストーリーを感情移入し易いものにしている。

 終盤のどんでん返しが見事。予想外のものだっただけに、ラストのPCの壁紙の映像が爽やかで心地よかった。
  【◎△×】7

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