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フェイス/オフ


1997年  アメリカ  138分

監督
ジョン・ウー

出演
ジョン・トラヴォルタ
ニコラス・ケイジ
ジョーン・アレン
ジーナ・ガーション
アレッサンドロ・ニヴォラ
ニック・カサヴェテス

   Story
 テロリストとそれを追うFBI捜査官が、互いの顔を入れ換えて戦うことになる異色のハードアクション。
 『ブロークン・アロー』などのジョン・ウー監督が、『男たちの挽歌』など香港時代に培った映像美学を集大成し た作品。

 FBI捜査官のショーン・アーチャー(ジョン・トラヴォルタ)は、 凶悪なテロリスト、キャスター・トロイ(ニコラス・ケイジ)を飛行場での壮絶な追撃戦の末に逮捕する。
 ところがキャスターは直前にロサンゼルスを壊滅させるほどの時限式細菌兵器を仕かけていたことが判明する。

 キャスターは植物人間となっており、唯一の情報源は獄中にいるトロイの弟ポラックス(アレッサンドロ・ニヴォラ)だけだ。
 焦るFBIはショーンに、顔の外科手術によってキャスター成りすまし、獄中のポラックスに接近して爆弾のありかを聞きだせ、という秘密命令を下す。


   Review
 外科手術による “顔の入れ替わり” とは荒唐無稽だけれど、主人公の一人がテロリストという設定は、世界のあちこちで自爆テロが頻発する今、 公開時よりずっと現実味が感じられる。
 「細菌兵器爆弾」なんてそのうちほんとに起こりそうな気もして、背中がゾクッとしたりして・・・。そんなわけで、公開時とはひと味違う面白さがあった。

 顔が入れ替わってまったく違うキャラクターになるジョン・トラヴォルタとニコラス・ケイジが見応えがある。

 トラヴォルタはもともとは善人のイメージが強い俳優だけに、彼が扮するFBI捜査官のショーンが遊園地の回転木馬で息子と遊ぶ幸せそうな笑顔、 退任して家庭でゆっくり過ごそうと妻のイヴ(ジョーン・アレン)と約束する夫とし ての温かさ、・・・彼の善良さがにじみ出る。

 ところが、中身がテロリストのキャスターになってからは、人を人とも思わぬふてぶてしい態度といい、冷酷な目といい、顔は同じトラヴォルタなのに、まるで別人だ。

 顔はキャスターになり替わって凶悪犯の特殊刑務所に潜入したショーンが、囚人に喧嘩を仕かけられた時の微妙な変化が印象的だ。
 懐かしそうに合図をしてきた弟ポラックスが、兄の小さな差異を敏感にキャッチし正体を見抜いたのだろうか、途中から冷淡な目で傍観するのもいい。

 一方、テロリストからFBI捜査官ショーンにチェンジするニコラス・ケイジも上手い。
 自分が本当の夫だ、と妻のイヴに語りかける時のショーンの情感の滲んだ表情、・・・同じニコラス・ケイジなのに、冒頭の酷薄なテロリストが嘘のようだ。

 ショーンとキャスターが鏡を挟んで対峙するシーン、鏡に映っているのは自分なのに顔は自分ではなく、鏡の向こ う側には自分の顔をした敵がいる。倒錯的な感覚に陥りそうになる。

 冒頭で愛する息子をキャスターによって奪われたショーンが、 ラストでは、キャスターの遺児をキャスターの恋人サーシャ(ジーナ・ガーション)から託されて家族として迎え入れるのも、温かい余韻を残していいなぁと思う。

 アクション・シーンに演出の冴えを見せるジョン・ウー監督だけど、意外に登場人物たちが織りなす人間ドラマがしっかりしている。
 もちろん、数々の華麗なアクション・シーンはウー監督の本領発揮、本作の魅力だろう。

 脱獄したショーンが、サーシャ、彼女の兄ディートリッヒ(ニック・カサヴェテス)らとともに、 かつての部下を率いて乗り込んできたキャスターと銃撃戦を繰り広げるシーンは、炸裂する弾丸にただもう息を飲むばかり・・・。
 ライティングで浮き上がったビルには5000発の火薬が仕かけられたそうだ。

 さらに、迫力満点のモーターボート・チェイス。一体どうやって撮影してるんだろう、と見てるだけでドキドキしてくる。 全編にわたるアクション・シーンのスタイリッシュな映像に目を奪われた。
  【◎△×】7

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