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ビフォア・サンライズ
恋人までの距離(ディスタンス)


1995年  アメリカ  102分

監督
リチャード・リンクレイター

出演
イーサン・ホーク
ジュリー・デルピー
アーニ・マンゴールド
ドミニク・キャステル

   Story
 列車の中で知り合ったアメリカ人の青年とフランス人の女性がウィーンで途中下車し、14時間だけという約束で一緒に過ごす間に芽生える恋を描くラブストーリー。

 アメリカ人青年ジェシー(イーサン・ホーク)とフランス人女性セリーヌ(ジュリー・デルピー)はウィーンに向 かう列車で偶然隣合わせに座り、意気投合する。

 最終目的地はジェシーがアメリカ、セリーヌはパリ。
 ジェシーが明朝アメリカ行きの飛行機に乗るまでの時間を、ウィーンをぶらつきながら過ごすことにした2人は、一緒に列車を降りる。

 町を当てどなく歩きながら、時に他愛なく、時に哲学的な会話を交わしながら、たがいの人生観やこれまでの暮らしをかいま見る2人。

 やがて別れの時が来る。セリーヌがパリ行きの列車に乗る直前、2人は半年後の「12月16日にこの同じホームで会おう」と約束する。


   Review
 続編『ビフォア・サンセット』(04) を先に見てしまい、それ以来、ずっと本作が気になっていた。 そうこうしているうちに続々編の『ビフォア・ミッドナイト』(13) が公開されて、気にかかる気持ちにますます拍車がかかるという具合。 念願かなってやっと鑑賞した。

 こういう映画って順を追って見るのもよし、順序が逆になって、過去を振り返るように見るのも味があっていいものだな、というのがまず浮かんだ感想だ。 それを最初に感じたのが、冒頭、ウィーン行きの列車の中の出来事だ。

 中年夫婦が喧嘩を始め、通路を挟んだ隣席に座っていたセリーヌはたまりかねて、少し離れた場所に席を移す。そ れがジェシーの隣席だったというわけ。
 この後のシリーズを思うと、2人が出会うきっかけが、倦怠期にかかった中年カップルの “夫婦喧嘩” というのは意味深だ。

 もちろんこの時の2人は若く、結婚どころか、恋愛だってまだ中途半端にしか経験していない。人生のほろ苦さを味わうのはこれからだ。
 そんな2人が他人の夫婦喧嘩が縁で知り合うのだ。人生を感じさせられられる。

 『ビフォア・サンセット』同様、大したことは起こらず、2人のすることといえばお喋りだけ。
 相手のことを知りたいけれどあまり立ち入ってもいけないし、2人の間には知り合ったばかりの遠慮や気後れがある。 その辺りの微妙な按配を、イーサン・ホークとジュリー・デルピー、自然体の演技で絶妙に醸しだす。

 質問ゲームでさり気なくお互いの心情を探り合ったり、ウィーンといえば『第三の男』の大観覧車、その観覧車で初キスを交わしたり、 バーのスマートボールでふざけながら、お互いの失恋歴をかいま見たり、「ルルル・・・」とダイヤルを回しての電話ごっこで互いに想いを告白し合ったり・・・。
 続編を先に見てしまった私としては、若い2人が眩しいほど初々しい。

 徐々に暮れていくウィーン。ライトアップされて浮き上がる街路や、仄明かりに照らされた石畳の裏通りが魅力的 だ。そこをぶらぶらとそぞろ歩くジェシーとセリーヌ。ウィーンの街が醸しだすクラシックな雰囲気と相まって、“町歩き” ドキュメントを見ているようだ。

 視線が合って「手相を観ましょう」と近づいてくる女占い師(アーニ・マンゴールド)、 河岸テラスにノートを広げ、「お題をください、詩を作りましょう」と声をかけてくる路上詩人(ドミニク・キャステル)、・・・そのどれもこれもがウィーン。

 ジェシーが一々ちょっと皮肉っぽい感想をいうのと対照的に、セリーヌは無邪気にそんな出会いを楽しむのが印象的だ。

 2人が一夜限りで結ばれた朝、白々明けの街を歩きながら、半地下室でハープシコードを弾く人に気づいて、道路沿いの窓から覗くシーンがいい。 別れが近づいている・・・、そんな思いがひたひた寄せてくる。

 パリ行きの列車が出るホームでひしと抱き合う2人。
 こうして別れた2人は、『ビフォア・サンセット』で9年後に再会を果たすのだ。
 私の中でやっと2つが1つにつながった。さー、次は『ビフォア・ミッドナイト』を見なくっちゃ・・・!
  【◎△×】7

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