HOME50音表午後の映画室 TOP




から騒ぎ


1993年  アメリカ  111分

監督
ケネス・ブラナー

出演
ケネス・ブラナー
デンゼル・ワシントン
キアヌ・リーヴス
エマ・トンプソン
マイケル・キートン
ロバート・ショーン・レナード
ケイト・ベッキンセール
リチャード・ブライアーズ

   Story
 シェークスピアの戯曲で、2組の男女の恋の行方を追ったコメディ。これまで4度映画化されているが、 本作はシェークスピアおたくのケネス・ブラナーが主演・監督で映画化している。

 イタリア、田園豊かなトスカーナ地方。
 メシーナを治めるレオナート(リチャード・ブライアース)のもとに、 アラゴンの領主ドン・ペドロ(デンゼル・ワシントン)が戦いに勝ち、凱旋するという知らせが届く。

 ドン・ペドロとともに、フローレンスの貴族クローディオ(ロバート・ショーン・レナード)、パデュアの貴族ベネディック(ケネス・ブラナー)、 ペドロの異母弟ドン・ジョン(キアヌ・リーヴス)ら一行が到着し、賑やかな宴が開かれる。

 クローディオとレオナートの娘ヒーロー(ケイト・ベッキンセール)は恋に落ち、 ベネディックとレオナートの姪ベアトリス(エマ・トンプソン)は、お互い気になるくせに、喧嘩ばかりしている。
 そんな中、クローディオとヒーローの結婚が決まるが、邪悪なドン・ジョンの企みで、クローディオは恋人が不貞をしたと思い込む・・・。


   Review
 話はなんとも他愛ない。というか、真面目に考えれば、クローディオの単純さに腹が立ったり呆れたり。
 あんなに一目惚れで夢中になった人を、仮に不貞を疑ったとしても、もちっと対応の仕方があるだろうに、わざわざ婚礼の場で、みんなの面前で罵るなんて。 こんなアホ男はヒーローのほうで見限っちゃえ、なんて思ってしまう。

 ヒーローが悲しみのあまり死んでしまうと (もちろんこれはヒーローの父親レオナートの策略だ)、 クローディオときたら、ヒーローの従姉妹と結婚することを承諾する。
 いくら罪滅ぼしといったってねぇ、一度も会ったことがない従姉妹と、まー、なんて男だろう〜!

 とか、あれこれいいながら、じつは私はこうしたストーリーがけっこう面白かった。
 というのは、出演者たちのいかにも芝居がかった仕草やセリフ回しが、シェークスピアの時代、どんな風に芝居が上演されていたかを彷彿させるように思えたからだ。

 当時、芝居小屋は2階3階は上層階級のための座席のある回廊で、庶民は1階の平土間で立ったまま観劇したらしい。
 いはば “かぶりつき” ですね。舞台との距離はないに等しいから、観客は舞台と一体になって芝居に一喜一憂したんでしょう。

 ヒーローが結婚式という晴れの場でクローディオに不貞を責められると、みんな「ノォー」「ノォー」と平土間から叫び、 従姉妹との結婚式でベールの下から死んだと思ったヒーローが現れると、「オォー」とどよめき歓喜する。
 そんな様子がありありと浮かんでくる。

 道化役を兼ねる巡査ドグべリーに扮するマイケル・キートンが傑作だ。 「誰であろうと “止まれ” と命じろ。止まらなければ見なかったことにしろ」とか「泥棒を見たらウサン臭い奴と疑え。そういう奴には関わらないことだ」とか、 言うことが一々トンチンカン。
 「敬意」と「嫌悪」を取り違えたり、「お前はクソ野郎だ」といわれて褒め言葉と思ったり・・・。腹を抱えて笑う観客が目に見えるようだ。

 退場場面では、部下と2人で “お馬に乗った坊や” よろしく手綱を握り (のつもり)、脚をパカパカ跳ね上げる。
 多分、平土間に下りて、観客たちが心得顔でさっと開けた中をパカパカ通っていったんじゃないかな。もっともらしい様子を想像するだけで、可笑しくなる。

 当時の芝居小屋の様子が自然に思い浮かぶせいか、ケネス・ブラナーの臭いオーバーアクションもかえってぴったりに思えてくる。

 意外だったのはデンゼル・ワシントンとキアヌ・リーヴスだ。えー、2人がシェークスピアものに? と思ったけれど、存外サマになっている。 とくにワシントンがもの凄くかっこいい。「殿」と呼ばれて、まさにアラゴンの大公の風格たっぷりだ。
 珍しく悪役のキアヌ、出番があまりないのが気の毒だったけど、デンゼルの異母弟といわれても「そうかも」なんて思ってしまう。

 庭園のあちこちで舞踏が繰り広げられる大団円は、案外、舞台の役者と平土間の観客が一体になって、総出で踊ったりしたのかも・・・。 2階3階の回廊席からはお偉いさんたちが羨ましそうに身を乗り出す・・・、そんな想像も楽しい。
 ♪嘆くな、乙女よ ♪男心は浮気なもの、と歌う主題曲が美しい。
  【◎△×】6

▲「上に戻る」



inserted by FC2 system