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カメラを止めるな!


2018年  日本  96分

監督
上田 慎一郎

出演
濱津 隆之、秋山 ゆずき
しゅはま はるみ、長屋 和彰
細井 学、山崎 俊太郎、市原 洋
真魚、大沢 真一郎、竹原 芳子

   Story
 監督・俳優養成の専門学校「ENBUゼミナール」のワークショップから生まれた異色のホラー映画。
 ゾンビ映画を撮っていた撮影クルーが本物のゾンビに襲われ、次々に感染していく様子を37分のワンカット・シー ンを盛り込んで描き、低予算の自主映画として異例のヒットとなった。

 ゾンビ映画専門チャンネルが開局記念番組としてゾンビドラマを企画し、撮影クルーたちが人里離れた山奥にある廃墟にやってくる。

 「30分間生放送、カメラ1台のワンシーン・ワンカット」というテレビ局の無理な要求を飲んでの撮影だ。

 リアリティを求める監督(濱津 隆之)はなかなOKを出さず、テイク数はとうとう42を数える。 そこにゾンビ化した血まみれのカメラマン(細井 学)が現われ、襲われた撮影スタッフは次々にゾンビ化していく。
 監督は撮影を中止するどころか、取り憑かれたようにカメラを回し続けるのだが・・・。


   Review
 映画ならどんなジャンルでも見る私だけど、唯一例外なのがゾンビものだ。 『フロム・ダスク・ティル・ドーン』(96) とか『バイオハザード』(01) とか、そうと知らずに見始めて、途中でゾンビが出てきてびっくりしたことがある。 映画としてはどちらもけっこう面白かったけど、さすがに続編は見ていない。

 そんな私がゾンビ映画という触れ込みの本作を見る気になったのは、巷で評判のこの映画が地上波でTV初放送されるというので欲を出したのだ。
 で、結論を先にいうと、存外面白かった。正直、映画の完成度はさほど高いとは思えないけれど、その粗さと熱気が勢いとなってこの映画の魅力になっているようだ。

 廃墟のような古びた建物でホラー映画が撮影されている。ハンディカメラの画面が微妙に不安定で、それが臨場感となって自分もその場にいるような気分になる。


 女優(秋山 ゆずき)の演技が気に入らず、監督の激しいダメ出しが続いてシーンはもう42テイク目に入っている。 メイク係(しゅはま はるみ)が休憩を提案し、監督・スタッフは外に出て、建物の中には俳優2人とメイク係、録音係(山崎 俊太郎)が残る。
 後半が面白いという大方の評とは逆に、私は37分ノーカット・ワンシーンのこの前半が面白かった。

 俳優2人とメイク係が雑談をしているうちに、妙な間があく。ちょっとギクシャクした感じ。う? なんだろ、と思っていると、メイク係が急にこの建物にまつわる噂を話し出す。 いわゆる都市伝説の類いの不気味な話だ。
 俳優2人は「うわ〜・・・」と怯えた様子。思いがけない話を聞かされて、薄気味悪いけど、どう反応していいか分からない・・・。そんなチグハグな空気が漂う。

 その後、外で変な音がする。男優(長屋 和彰)は急に話を逸らせてメイク係に趣味は何かと聞き、護身術の話になる。 メイク係は、後ろから羽交い締めにされた時は「ポン!」と叫んで腕を振り上げ、相手がびっくりした隙きに抜け出す、というのを男優相手に実演してみせる。
 こんな時、こんな場で、そんなことをわざわざしなくても、とこれまた妙なチグハグ感・・・。なんだか知らないけどなんだか怖い、 そんな感じでみんなビビっているのが分かる。

 固まったように椅子に座っていた録音係が急に怖気づいたように外に出ようする。止められると、「ちょっと・・・」「ちょっと・・・」を連発。
 たしかにこんな時、これこれこうで、なんて説明できるもんじゃない。(ところがこれは後で、全然違う事情であるがことが分かる。)

 こんな具合で、俳優たちの素人っぽい動きがとてもリアルなのだ。
 もちろんこれは映画だし、盗み撮りしている訳じゃないから、俳優はそういう演技をしているのだと思うけど、見ていてまるでそういう感じがしない。
 どこからともなく忽然と現われ、「これだ! これこそが本物の恐怖だ!」と叫んで嬉々としてカメラを回す監督。その突拍子のなさに笑ってしまう。

 後半では、前半の数々のおかしな出来事がなぜ起きたのか、その真相が明かされる。 舞台裏のさまざまなエピソードも加わって、映画が完成されるまでの製作裏話が綴られるのだ。二段構えの構成がユニークだ。
 カメラに突然 (血のつもりの) 赤インクが飛び散ったり、手がにゅっと出てそれを慌てて拭き取ったり、演出なのかハプニングなのか分からない動きが面白い。

 カウントダウンで番組が終了した時のクルー全員の笑顔が素敵だ。
 トラブルだらけの現場なのに、スタジオで番組を見ていたプロデューサー(竹原 芳子)が「トラブルがなくてよかった、よかった」といったのがなんともいえず可笑しかった。
  【◎△×】6

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