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月世界旅行


1902年  フランス  16分

監督
ジョルジュ・メリエス

出演
ジョルジュ・メリエス
ジュアンヌ・ダルシー

   Story
 砲弾型ロケットで月を訪れた探検隊の冒険を描いた、ジョルジュ・メリエスが脚本・監督したサイレント映画。

 ストーリーはジュール・ヴェルヌの「地球から月まで」とH・G・ウェルズの「月世界最初の男」をつなぎ合わせたもので、世界最初のSF映画とみなされている。

 天文学学会で月への探検旅行が提案され、メリエス扮する天文学教授をリーダーとした6人の学者が、砲弾型ロケットに乗って月に向かう。

 月に到着した一行は疲れて仮眠を取るが、いつの間にか雪が降り出し、大慌てで洞窟に避難をする。そこに月人たちが襲いかかる。
 一行はこうもり傘で応戦するが、捕らえられて王様の前に引き出されてしまう・・・。


   Review
 手元の資料で重宝しているのが、「映画史100年ビジュアル大百科」のサブタイトルの付いた「週刊 ザ・ムービー」(デアゴスティーニ刊) だ。 それの1902年分の表紙の写真が配刊当時とても気になった。

 月と覚しき凸凹した球面に目鼻口が付いている。その目に妙な筒が突き刺さり、月は口を歪めていかにも不愉快そうだ。 もう片方の目が「何なのよ、これ」といわんばかりのムッとした表情。奇妙でユーモラスで、ひと目見ただけで忘れられないインパクトがある。
 その後、これが映画史上最初のSF映画といわれる、ジョルジュ・メリエスの『月世界旅行』の一場面だと知った。

 1902年に製作・発表され、今は著作権が切れているのでネット上で動画で見ることが出来るそうだけれど、私と してはPCの小さな画面ではなく、せめてTVサイズで見たい。
 偶然ケーブルTVで放映されると知り、やっと鑑賞することが出来た。

 私が見たのは (活弁付きの) 着色版。モノクロ版と同時期に制作され長らく紛失していたけれど、1993年にスペインで発見されたのだそうだ。

 “劣化が激しく、復元は困難を極めたが、現代の観客に、この名作を再発見してもらうべく、最新技術を駆使した緻密な作業で遂に甦った” という字幕説明が冒頭に出る。

 撮影はアップがなく遠景だけ。その上、登場人物のちょこまかした動きに、セットもごちゃごちゃしているので、カラーでないと映像の細部は分かりにくかったかもしれない。
 わずか15分ほどの、TVの前に座ったと思ったらもう終わる、というあっけないほどの短さ。でもこれが色んな意味でなかなか面白かった。

 科学性は一切無視し、奔放といっていいほど自由に思うがままに映像を作り上げている。
 月旅行に出かける学者たちが揃いも揃ってお年寄りなのが愉快だけど、 見送る (ちょっと太めの) ピチピチギャルたちが揃いのショートパンツできれいなお御足を披露、(当時としては多分) お色気大サービスなのが楽しい。

 月面にドスンとロケットが着陸する。
 老学者たちはなぜかこうもり傘を携帯。これをキノコにかぶせると傘はキノコに変身してニョキニョキ伸びる。
 バッタ跳びをする緑色の奇怪な月人たちが襲ってくると、傘で応戦、相手を叩いて消滅させる。そのたびにボワンと煙が上がる。


 メリエスはもともとはマジシャンだったそうで、まさに手品のトリックの応用だ。 フィルムを止めてその間に物や人を移動させ、違うものに変わったり消滅したように見せかける。
 メリエスがこのアイデアにどれほど夢中になったか、見ているだけで彼のワクワク感が伝わってくるようだ。

 月人たちに捕まって王様の前に引き出された学者たちは、例の通り傘で叩いて王様を消滅させ、無事地球に帰還。
 といっても、ロケットから垂れ下がった紐に学者がぶら下がり、その重みで崖から落下して地球の海にドボンと着水、という調子だ。

 そして連れ帰った月人も一緒に大歓迎セレモニーだ。なんとも長閑(のどか)で、いい加減。それがまたいい。
 映画としての評価はちょっと難しいものがあるけど、歴史的映画との遭遇はなかなか楽しかった。
  【◎△×】7

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