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きっと、うまくいく


2009年  インド  170分

監督
ラージクマール・ヒラニ

出演
アーミル・カーン
R・マドハヴァン
シャルマン・ジョシ
カリーナ・カプール
オミ・ヴァイディア
ボーマン・イラニ

   Story
 インド本国で歴代興行成績ナンバーワンを記録した、エリート大学を舞台に3人の学生が巻き起こす珍騒動を描いたヒューマンコメディ。
 主人公たちが抑圧的な学長と対立しながら青春を謳歌する前半と、10年後、卒業後に姿を消した主人公の消息をた どる後半の2部構成。

 インド屈指の名門工科大学に入学したファラン(R・マドハヴァン)とラージュー(シャルマン・ジョシ)は、 そこで天才肌の自由人ランチョー(アーミル・カーン)に出会う。

 3人は競争社会の権化のような鬼学長(ボーマン・イラニ)に目の敵にされながら、“きっと、うまくいく(Aal Izz Well)” を合言葉に大学生活を謳歌する。
 しかし、ランチョーが学長の娘ピア(カリーナー・カプール)と恋に落ちたことから、暗雲が漂い始める・・・。

 10年後。同窓生チャトル(オミ・ヴァイディア)から突然呼び出されたファランとラージューは、彼と一緒に卒業以来消息の知れないランチョーを捜し出す旅に出る。


   Review
 3時間か〜、長いな、とちょっと覚悟しての鑑賞だったけど、意外に長さを感じなかった。 インターバルを挟んでの2部構成で、前編と後編でストーリーの組み立てが違い、気分が変わったのが大きかったかもしれない。

 全編通しての語り手はファラン。前編はランチョーとの出会いから大学生活でのエピソードが時間軸に沿って綴られ、 後編は10年後、「現在」の卒業後消息の知れないランチョーを探す旅と、「過去」の大学での出来事が交互に語られる。

 唸らされたのは、ファランとラージューがランチョーをやっと探し当てる前編のラストだ。
 声を掛けると、振り向いたのは全くの別人。 ファランとラージューは同姓同名の別人を彼と早とちりしたのか、ランチョー探しのやり直しだな・・・、と思いかけた時、壁に飾られた卒業写真がアップになる。


 撮影時、学長の隣に座ったのは卒業成績1位のあのランチョーだ。反対側は成績2位のチャトル。 それなのに、写真の中で同じ場所に座っているのはなんと、今、目の前にいるこの男ではないか!
 え? と虚を突かれた気持ちになる。そこでストンとインターバルになるのだ。

 こうして後編は “それではあのランチョーは何者、 そしてどこにいった?” の謎解きも絡めて進むので、「現在」はもとより交互に綴られる「過去」の出来事も前編の時とは異なる興趣が湧いてくる。 シンプルだけどうまい構成だなと思う。

 それにしてもインドでは男ならエンジニア、女なら医者になるのが理想であり、子供はそうした親の価値観に絶対に従わなければならない、 という風習が強いらしい。
 そのためには猛烈な進学・高成績競争を勝ち抜かなければならない。その結果、親の期待と重圧に押しつぶされて、若者の自殺率が高いというのだ。

 本作が本国で大ヒットしたというのは、それだけインドの現実を表していて人々が共感したからだろうと思う。

 けっこう深刻な社会問題が背景にあるとはいえ、歌や踊りが適所に盛り込まれてエンターテインメントに徹しているところは、インド映画らしい軽快さだと思う。

 中でも邦題にもなっている “Aal Izz Well” ( “All Is Well” のインド方言英語らしい) を合言葉に歌い踊るシーンが楽しい。 楽天的でノー天気、けれども厳しい現実を跳ね返そうというパワーを感じさせる。

 権威主義の鬼学長に出世主義の留学生チャトルが悪玉で、真っ直ぐで自由奔放なランチョー、彼との友情を糧に自立に目覚めていくファランとラージューが善玉だ。
 色分けがベタすぎて笑ってしまうけど、それでも学長は最後はランチョーたちの献身的な働きで姉娘の難産の危機を救われて軟化する。チャトルだけが最後まで世俗的な悪役だ。

 大学の成績は常にランチョーが一番、自分は2番に甘んじなくてはならなかったチャトル。 その鬱憤を、10年後、見事に晴らした!と得意の絶頂にいたわずか数分後にストンと奈落の底に落とされる。

 大方そういくんだろうな、と予想した通りの展開でいささか気の毒になるけれど、しぶとい彼のこと、「きっと、うまくいく」でこの先ランチョーたちと上手にやっていくでしょう。 そんな明るさが本作の魅力だ。
  【◎△×】7

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