Story 犯罪心理学を専門とする学者と事件を担当する刑事の2人の女性が、過去の猟奇殺人事件の手口を模倣する連続 殺人犯を追うサイコ・サスペンス。 サイコスリラー・ブームに火を付けた『羊たちの沈黙』の流れをくみ、犯人の心理を行動面から検証するプロファイリングの概念を取り入れている。 女性ばかりを狙った猟奇殺人事件がサンフランシスコ郊外で続発する。 事件を担当する刑事モナハン(ホリー・ハンター)は、 同僚ルーベン(ダーモット・マローニー)とともに犯罪心理学者ハドソン博士(シガーニー・ウィーヴァー)を訪れ、捜査への協力を要請する。 ハドソンは1年ほど前ダリル・カラム(ハリー・コニックJr.)という男に襲われ、一命はとりとめたものの、それ以来 “屋外恐怖症” になっていた。 犯人は過去の様々な連続殺人の手口を真似た “コピーキャット (模倣犯)” であることを突き止めるハドソンだが・・・。 Review 犯罪の手口から犯人の行動心理や人物像を分析し、犯罪捜査に役立てるプロファイリングという手法は、今では私たちにもすっかり馴染みのものになっているけれど、 『羊たちの沈黙』(81) で最初にそれを知った時はずいぶん驚いたし、新鮮な印象を受けたものだった。 本作もプロファイリング手法を取り入れている。殺人鬼を追う捜査官が女性であることや、 犯人をプロファイルする犯罪心理学者ハドソンが、人との関係を絶ち、世間と隔絶して暮らしている点も『羊たちの沈黙』を彷彿させる。 ただ大きく違うのは、『羊たちの沈黙』の元精神科医・レクター博士が重犯罪人として精神病棟に隔離されている のに対し、ハドソンは脱走した死刑囚にトイレで襲われ、殺されかけたことがあり、その後遺症で屋外恐怖症になってしまったことだ。 犯人ダリルは彼女の証言で有罪となった。今は服役しているけれど、いつまた脱獄して復讐に現れるか分からない。 そんなハドソンの怯えが伝染して、「ちょっとオーバー過ぎるんじゃない?」とか思いながら、映画を見ているこちらもだんだん不安な気持ちになってくる。 ハドソンを演じるのがタフな印象のシガーニー・ウィーヴァーで、女性捜査官モナハンに扮するのが華奢なホリー・ハンター、という一見逆なキャスティングが絶妙だ。 ホリー・ハンターが怯えたら、ハマりすぎていたたまれなくなりそうだけど、見かけの割にケロッとしているのが面白い。 一方、シガーニー・ウィーヴァーは犯罪心理学の専門家とはいえ、異常な犯人への恐怖から薬と酒が手放せなくなっている。 エキセントリックで神経質な個性が思いのほか似合っている。 やがて連続殺人犯が過去の有名な猟奇犯罪を模倣する “コピーキャット (模倣犯)” であることや、最終ターゲットはどうやらハドソンであるらしいことが分かってくる。 しかし彼女に恨みを持つダリルは服役中であり、徐々に姿を表わす模倣犯ピーター(ウィリアム・マクナマラ)に はハドソンを狙う理由が見当たらない。 ダリルとピーターの間には何か接点があるのだろうか、あるいはピーター自身に何か動機があるのだろうか、といろんな疑問が湧いてくる。 模倣犯というアイデアが斬新だ。日本でも時にそうした犯罪者が現われて社会を不安に落とし込むことがあるだけに、現代社会の病理が色濃く反映される犯罪だといえる。 そこにきっちり焦点を当て、謎解きをしていけば、手応えのある映画になったのではないかと思う。 惜しむらくは、刑事モナハンをめぐる同僚刑事ルーベンとニコ(ウィル・パットン)、ルーベンをめぐるハドソンとモナハン、の三角関係っぽい流れや、 終盤近く、事件と直接関係のない出来事でルーベンが殉職するなど、妙に中途半端な話がはさまったこと。ストーリーの緊張感が薄れ、テンポが悪くなってしまったと思う。 しかし、ピーターの死で事件が終わることはなく、ハドソンは狙われ続けること暗示するラストは、ぞっとする怖さがある。 サイコパスのダリルを演じるハリー・コニックJr.がはまり役。 【◎○△×】6 |