Story 大観衆を前に、壮麗なマジックを駆使して銀行から大金を強奪する4人のマジシャンと、彼らを追い掛けるFBI捜査 官たちの攻防を描くサスペンス・ドラマ。 資産家トレスラー(マイケル・ケイン)をパトロンとする、 アトラス(ジェシー・アイゼンバーグ)、マッキニー(ウディ・ハレルソン)ら4人組のスーパー・イリュージョニスト “フォー・ホースメン”。 彼らはラスベガスでショーを行いながら、同時にパリの銀行から大金を奪うマジックを披露、観客の度肝を抜く。 FBI捜査官ディラン(マーク・ラファロ)は、インターポールから派遣された捜査官アルマ(メラニー・ロラン)と4人組を追跡するが、かわされてしまう。 2人はマジックの種明かしを専門とするサディアス(モーガン・フリーマン)に助言を求めるが・・・。 Review たまたまNHK・BSで「マジック・キャッスル」というロサンゼルス・ハリウッドにあるマジック専門の会員制クラブの番組を2週続けて見た。 出演するだけでマジシャンのステータスが上がるという格式のあるクラブらしい。 番組は、日本人理事で彼自身もトップマジシャンである緒川集人が哀川翔とタレントの勝俣州和を案内し、 一流マジシャンたちの実演をかぶりつきといっていいほどの近さで見るという趣向だ。 必ずタネや仕掛けがあるはずなのに、目を皿のようにしても分らない。かと思えば、アットランダムの積み重ねの はずが、最後はきっちり用意された答えに到達する。だまされる快感がじつに楽しかった。 本作の冒頭、路上パフォーマーのアトラスがカードを操りながら、「近づいてもっとよく見て。そのほうがだましやすい」と取り囲んだ客たちにいう。 そして「近づきすぎると見えなくなる」とも。 一発ガァーンと食らった感じ。 トリックを見抜いてやろう、その思いが強すぎるとかえって視野からたくさんのものがこぼれ落ち、木を見て森を見ず、の状態になってしまうということなのだろうか。 この映画には “ミスディレクション” という言葉がよく出てくる。これも同じことをいっているのかも・・・。 客を思い込みや先入観、その他もろもろを使って誤った方向に誘導する。これが出来た時にマジックはほぼ成功したといっていいのだろう。 本作は派手な仕掛けのイリュージョンが “フォー・ホースメン” のスタイリッシュなしゃべりやパフォーマンスで披露されて、映像の華やかさにうっとりさせられる。 同時にストーリーそのもののトリックにまんまとだまされる面白さ。 例えば、マジックのタネ明かしを専門とするサディアスが、シュライクというマジシャンの話をする。 彼は川に沈めた金庫からの脱出に失敗したけれど、遺体はまだ見つかっていないのだという。 その時はさらっと聞き流していたけれど、その後、折に触れてはシュライクの名が出てくる。 そのうちに、彼には何か重要な秘密があるんだろうか、ほんとは彼、まだ生きているんじゃない? もしかするとあの人?・・・などとだんだん気になりだす。 “フォー・ホースメン” を背後で操っている黒幕がいるらしい、という疑惑も浮上する。 そうなると、5人目のホースマンはひょっとしてあの人? いやこの人かも、と誰も彼もが怪しく見えてくる。 そもそも、もともとは路上パフォーマーだった4人をピックアップして招集したのはいったい誰なんだろう、その目的は何? という疑問もある。 はじめは “ホースメン” のパトロンの富豪トレスラーが黒幕かな、とシンプルに思っていたけれど、彼も4人に出し抜かれて莫大な資産を失ってしまうのだ。 インターポール捜査官のイルマも、パリから派遣されてきたばかりというのに、事情が分かりすぎているのが変といえば変だ。ストーリーそのものが見事にイリュージョン。 幻惑されているうちに、5人目のホースマンの正体やその目的が、それまでの伏線すべてが絡み合って明かされ、アッといわされる。 “フォー・ホースメン” を演じる4人のそれぞれの持ち味を活かしたパフォーマンスが魅力的だ。 中でも、ハンサム度がアップしたシャープな早口のジェシー・アイゼンバーグと、催眠誘導を駆使する食えない詐欺師のウディ・ハレルソンが強烈な存在感。 だまされる醍醐味をたっぷり楽しめた。 【◎○△×】7 |