Story ジュリー・デルピーが監督・脚本・主演を務めた『パリ、恋人たちの2日間』の続編のラブ・コメディ。 パリからニューヨークへと舞台を移し、再びジュリー・デルピーがメガホンを取っている。 かつての恋人ジャックと別れ、ニューヨークで新しい恋人ミンガス(クリス・ロック)と暮らすマリオン(ジュリー・デルピー)。 互いの連れ子と共に仲良く同居生活を送っていたが、 写真家のマリオンの個展開催に合わせて、パリから彼女の父ジャノ(アルベール・デルピー)と妹ローズ(アレクシア・ランドー)がフランスから訪ねてくる。 なぜか、マリオンの元カレで現在妹ローズと交際中のマニュ(アレックス・ナオン)までもが一緒だ。 マイペースで奔放な彼らの言動にマリオンは振り回され、笑顔で迎えたミンガスもしまいにイライラが募るばかり・・・。 Review 『パリ、恋人たちの2日間』(70) が楽しかったので期待したのだけど、本作は私にはまったくダメだった。 なにかと自由奔放なフランス人と、意外に保守的で倫理的なアメリカ人のカルチャー・ギャップが洒脱な会話で描かれる『パリ、恋人たちの2日間』は、 マリオンの恋人のアメリカ人ジャックの戸惑いが可笑しくて、一方で「うん、分かる分かる」と大いに感情移入して見たものだった。 たとえば、2人で町を散策していると、男たちが次々マリオンに声をかけてくる。みんな元カレらしい。 「別れた彼女にはもう会わない」というジャック、「ずっといいお友達よ」というマリオン。 歩いていると、いくらでも元カレに出会うマリオンに、「いったい何人恋人がいるんだ」とジャックが聞く。この時のマリオンの台詞に笑ってしまった。 「あなたと出会った時、私32よ、男がいたって不思議はないでしょ」 まったくもって、ごもっとも。あっけらかんとしたものです。 さすがは粋なフランス人、と窮屈な恋愛観から外れた自由さに大いに共鳴したものだった。 マリオンの家族も、画廊を営むパパも昔ヒッピーだったというママも、ジャックから見ると仰天ものだけど、どこか微笑ましかったりして、 クスッと笑いながら楽しんで見ていられた。 本作は、そのマリオンの家族がフランスからやって来て、妹ローズの恋人でマリファナ中毒のマニュまで押しかけ、 みんなが傍若無人の振る舞いを繰り広げる。(ママは亡くなったらしくて、登場せず。) 前作にあった粋なセンスは雲散霧消、あまりの羽目の外れぶりに、苦笑、失笑がいつの間にか不快感に変ってしま うほどだ。 なにより残念なのは、パパや妹ローズの言動がまるで色キチにしか見えないこと。(隣人男性も、ローズの半出しのお尻にいかれて、ややその気あり) 。 これではとうてい映画を楽しむ気持ちになれない。 はじめは家族の振る舞いの被害者だったマリオンまで、途中から突然切れやすくなって、人目も憚らずつかみ合いを始める始末だ。 唯一まともなのはマリオンの現在の恋人ミンガスだけ。これだけ好き放題をされて、いくら恋人の家族とはいえ、よく我慢するなぁ、と同情してしまう。 写真家のマリオンが自分の個展で魂を売る、というエピソードも、何をいいたいのかさっぱり分からない。 客寄せのお遊びかと思ったらけっこう本気らしくて、後で売った魂を取り戻すために、マリオンは屋根に引っかかって飛べなくなった鳩を逃がしてやろうとしたりする。 この騒ぎで、マリオンに対するミンガスの愛が本物と分ったことがせめてもの救いかな・・・。 【◎○△×】5 |