Story 無知で成りゆき任せの暮らしをしていた女工員が、組合活動を通じて成長していく姿を描いた人間ドラマ。 サリー・フィールドがアカデミー主演女優賞を獲得した。 1978年。アメリカ南部の保守的な町で紡績工場で働くノーマ・レイ(サリー・フィールド)は、2人の子供を育てるシングル・マザーだ。 男とダラダラと関係を続ける暮らしに、両親(パット・ヒングル、バーバラ・バクスレイ)はいつもハラハラ心配していた。 ある日、ノーマの前にニューヨークの全米繊維組合から派遣されたルーベン(ロン・リーブマン)という男が現れる。 彼は組合のないノーマの工場に労働組合を作るためにやってきたのだった。 給油所で働くソニー(ボー・ブリッジス)と再婚し、穏やかな暮らしを始めたノーマはルーベンの活動に関心を持ち、次第に熱心な協力者となってゆく。 Review 組合活動を取り上げた映画・・・、ちょっと堅苦しいかな、と思ったけど、ヒロインが一人の女性として成長する姿を描いていて、共感できる映画だった。 ただ、全体にテーマの掘り下げが浅い印象。 たとえば女性の人権活動をテーマにした『未来を花束にして』(15) では、ヒロインの痛切な体験が彼女を目覚めさせていく様子や、 活動の切り崩しを図る体制 (=警察) の動きなどがきちんと描かれて、説得力があった。 本作の場合、映画序盤で、ノーマは妻子ある男とモーテルで逢い引きをした後、もうこんな関係は止めよう、という。気持ちがしっくりしない、と。 結果、ノーマは男に殴られたりするのだけど、彼女なりにこんな暮らしはよくない、変えなくては、と薄々思っていたのだと思う。 場面が変わり、ノーマは工場長に呼びつけら、いつもみなの先頭に立って文句を言う、といわれる。 文句とは、“休憩時間を延長しろ” とか “紙ナプキンマシンを設置しろ” とか、つまりは労働条件の改善についてだ。 といってもノーマ自身がそうとはっきり自覚していた訳ではなく、その時々の働きにくさを工場にクレームつけていただけなのだろうけど。 こうしたことから、ノーマの中に今の暮らしへの疑問や「労働組合なるもの」に関心を持つ下地があったことは理解できる。 それでも映画で描かれるのは、ルーベンが工場幹部に囲まれながら工場内の掲示板をチェックして回り、 自分の配ったチラシが工員たちの見えるところに貼られるよう要求するのをじっと見ていたノーマが、翌日ルーベンに手伝いを申し入れることだ。 それからはもう、熱心な活動員になっている。これはやっぱり唐突感が否めない。ノーマにとって切実なターニングポイントになる出来事がほしい、と思ってしまうのだ。 工員たちに労組結成を呼びかける活動にしても同様だ。描かれるのは、ルーベンもノーマも工員たちにもっぱらチラシを配って回る様子ばかり。 集会も開かれるけれど、「組合員はみな一体。仲間だ」というようなルーベンの話や、みなが工場での働きにくさを語り合うだけなので、 これで本当にみなの中にに意識の変化が起きるのかな、と素朴な疑問が湧いてくる。 ほかにも、再婚した夫ソニーと活動にのめり込むノーマの関係の描写も十分とはいえず物足りなさを感じる。 とはいえ、演じる俳優たちには愛着を感じる。まず主演のサリー・フィールド。ほっぺたをプッと膨らませ口をキッと曲げて、気の強そうな表情がいい。 終盤、拘置所から釈放された後、幼い子供たちを周りに集めて語りかける。 「私は完全じゃない。間違いもしたけれど、もっといい工場するにするために組合に入ったの。私は闘う、正しいと信じたことのために」。 ご立派、ノーマ、ほんとによく頑張った、と心から拍手を送りたくなる。 ルーベン役のロン・リーブマン、初めて見る俳優だけど、知的で冷静で、でも温かい。さほどハンサムじゃないのに、どんどんカッコよく見えてくる。 ラストの別れのシーンはほんとに素敵だ。 ソニー役のボー・ブリッジス、若い頃はこんなに可愛かったんだ〜。 「君がどんなに疲れていても、病気になっても、歳をとっても、いつも僕がそばにいる。僕には君しかいない」。 妻にこんなセリフがいえる夫なんてそう居るもんじゃない。凡庸だけど誠実な夫は彼のキャラにほんとによく似合っていた。 【◎○△×】6 |