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ザ・プレイヤー


1992年  アメリカ  124分

監督
ロバート・アルトマン

出演
ティム・ロビンス
グレタ・スカッキ
ピーター・ギャラガー
ウーピー・ゴールドバーグ
ヴィンセント・ドノフリオ

   Story
 ハリウッドのメジャー・スタジオで起きた殺人事件を中心に、ハリウッドの内幕をシニカルに描いたブラック・コメディ。 長らくハリウッドを離れていたアルトマンの復帰作で、アルトマンお得意の群像劇に一線級のスターたちがカメオ出演している。

 “プレイヤー” とはハリウッドの業界用語で、映画製作のすべてを牛耳ることができる実力者を指す。 グリフィン・ミル(ティム・ロビンス)はそんな若きプレイヤーの一人、大手映画会社のヤングエグゼクティブだ。

 彼のオフィスは山のように企画が持ち込まれ、脚本家や監督たちの売り込みでひきもきらない。そんなある日、彼に企画をボツにされたという脚本家からの脅迫状が届けられる。
 一方で、20世紀フォックスからやり手プロデューサー、リーヴィー(ピーター・ギャラガー)が引き抜かれてくるという噂にも、グリフィンは頭を痛める。

 売れないライターのデヴィッド(ヴィンセント・ドノフリオ)を脅迫者とみたグリフィンは、口論の末、彼を殺してしまうが、 その後も脅迫状は届き続ける。
 そんな折、グリフィンはデヴィッドの恋人の画家ジューン(グレタ・スカッキ)と知り合い、恋仲になり・・・。


   Review
 カメオ出演の豪華な顔ぶれ、数の多さに目がチカチカ。ハリウッドの一流スターたちがほんのちょっとしたシーンに何気ない顔で登場し、さっと退場してしまう。 何とももったいない。
 時には見ているこちらが、本人として出ているのか、役を演じているのか、こんがらがってくるほどだ。

 出演料がさぞ大変だろうと思いきや、みな、俳優ユニオンが規定する最低ギャラで出ているのだそうな。スター俳優たちのアルトマン監督人気のほどが分かる。

 ところで、私にとって印象深かったのは、本作の中で2つ、大好きな映画を連想させるシーンがあったことだ。
 まず、グリフィンの犯した殺人を目撃したと名乗り出た中年女性が、面通しで並んだ男たちの中から、カモフラー ジュで入っていた刑事を真犯人と指摘する場面。

 めがねをかけた目撃者の女性は、面通しの男たちをガラスのこちら側から見ながら「むずかしいわ」を連発し、身の乗りだし懸命に見極めようとするけれど、 どうも記憶が曖昧らしい。
 それでも、「はっきり見たのよ」と、自分の記憶は間違っていないことを主張する。

 こうしてグリフィンは危うく難を逃れ、無罪放免のなるのだけど、この場面で私はすぐに、シドニー・ルメット監督の秀作『十二人の怒れる男』(57) を想起した。

 この映画では、証人として出廷した中年女性が、容疑者の少年が父親をナイフで刺すのを見た、と証言する。
 しかし陪審員の1人が、彼女の鼻の付け根にめがねの痕があることに気づいてから、証言の信憑性が問題になる。
 私もド近眼なので、目が悪い (=よく見えない) ことを悟られたくない証人の女性心理は痛いくらいによく分かる。それだけに記憶に残ったシーンだった。

 もう1つはラストシーン。車を運転するグリフィンに、ライバルのリーヴィーから新しい脚本についての連絡が入る。 電話を代わった脚本ライターは、「今までは “絵はがき専門”。“サスペンスの王” さ、思い当るか?」という。
 ついに姿を現わした脅迫者、しかも声だけ。これはもう、ほんとに巧い。

 謎の脚本ライターはグリフィンに企画の内容を話す。それは、グリフィンに起こったことがそっくりそのままなぞられていた。
 「タイトルは?」と聞くグリフィンに、彼は「ザ・プレイヤー」と答える。

 これはジュリアン・デュヴィヴィエ監督の名作『アンリエットの巴里祭』(54) のラストを彷彿させる。

 この映画では、2人の脚本家がすったもんだしながら1本のシナリオを作り上げ (その内容自体がとても楽しくて素敵なのだけど)、 主役の1人、ミシェル・オークレールに持ち込む。
 すると彼は、「とてもいいね。でも残念ながら、この映画は撮り上げたばかりなんだよ」という。 驚く2人に、彼は茶目っ気たっぷりに「ジュリアン・デュヴィヴィエ監督の “アンリエットの巴里祭” さ」というのだ。

 ここでポンと終わるラストがとても洒落ていた。本作では「結末は無罪、ハリウッド式ハッピーエンドさ、売れるぜ」というライターの言葉で締めくくられる。 ハリウッドを皮肉るアルトマン監督の顔が覗いて見えるようだ。

 犯罪者が成功をつかむラストは後味がよろしくないという向きも多いけど、私はけっこう面白かった。
  【◎△×】7

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