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サイド・エフェクト


2013年  アメリカ  106分

監督
スティーヴン・ソダーバーグ

出演
ジュード・ロウ
ルーニー・マーラ
キャサリン・ゼタ=ジョーンズ
チャニング・テイタム

   Story
 うつ病の女性に処方した新薬の副作用を巡って思わぬ事件に巻き込まれた精神科医が、隠された真相に迫っていく さまを描くサスペンス・スリラー。

 金融マンの夫マーティン(チャニング・テイタム)がインサイダー取引で逮捕されたのを機に、 以前に患ったうつ病を再発させたエミリー(ルーニー・マーラ)は、交通事故を起こす。

 診察にあたった精神科医バンクス(ジュード・ロウ)は、事故現場の様子から彼女が自殺を図ったのではないかと推測する。

 かつて彼女を診ていたシーバート博士(キャサリン・ゼタ・ジョーンズ)から症状の詳細を聞き出したバンクスは、新薬を投与し、症状の改善を図ることにする。
 そんなある日、服役を終えたマーティンと新たな生活をスタートさせたエミリーが、夫をナイフで刺殺する事件が起きる。


   Review
 “side effect” を辞書で引くと、「(薬などの) 副作用」と出てくる。
 風邪薬は眠くなるから運転前は飲まないように、と注意書きがあったりするけど、どんな薬でも副作用はあり、よく効く薬ほどそれは強いそうだ。 ちょっと怖い気もするけど、ある程度は覚悟しないといけないのだろう。本作は “薬の副作用” という切り口が目新しい。

 ヒロインのエミリーは地下駐車場の壁に激突して怪我を負い、診察した精神科医のバンクスは抗うつ剤を処方する。 自殺を疑ったのと、エミリーが、ここ数年うつを患っている、といったからだ。

 バンクスは入院を勧めるけれど、エミリーは、刑務所に服役していた夫が出所したばかりだから、と入院ではなく 新薬アブリクサの処方を望む。
 後で振り返ると、この序盤部分に鍵が隠されているのに気づき、巧いなぁ〜、と思わされる。

 で、エミリーは抗うつ剤の副作用で夢遊病状態になり、帰宅した夫をナイフで刺殺、そのまま眠り込んでなに1つ記憶していない、という事件が起こる。

 裁判ではバンクスは担当医として心神喪失の可能性を証言し、エミリーは無罪となる代わりに精神医療センターに治療入院になる。 一方、バンクスは新薬の処方をめぐって厳しく責任を問われるようになる。

 映画序盤、高額の報酬と引き換えに新薬の治験を患者に試みる、という契約をバンクスが製薬会社としているシーンが出てくる。 叶わんなぁ、でもこういうことって普通に行われてるんだろうな、と思う。
 それだけに、そのあと映画が医療と製薬業界、医師の責任といった社会派ドラマではなく、詐病、株価操作をめぐるサスペンス・ドラマに進展するのはほんとに意外だった。

 医師としての社会的信用を失い、追いつめられたバンクスがふとしたことからエミリーと元主治医のヴィクトリア・シーバート博士に疑惑を抱き、 真相に迫っていくプロセスがスリリングだ。

 エミリーの働いていた会社のモニターに流れていたエア・バッグの広告、存在しない同僚ジュリア、アブリクサの副作用についてのシーバート博士のレポート・・・。

 さらに「エミリーは何度も夢遊病状態になったのにあなたは投薬し続けた」と博士が口を滑らせたことから、2人の共謀にバンクスが気づく場面は、 短くさり気ないけど、迫力がある。

 2人がバンクスに罠を仕かけて陥れたように、今度は彼が2人に罠を仕かけていく。なかでもバンクスが塩水を使ってエミリーを偽の催眠テストに誘導するくだりは圧巻だ。
 シーバート博士が裏切った、と思わせて、逆にエミリーを裏切らせるやり口は痛快ですらある。

 この辺り一気に進み過ぎて少々理解が追いつかない難があるけれど、 邪魔なエミリーの夫の排除、新薬をめぐる株価操作、と女2人のしたたかさ、とくにルーニー・マーラのはかなげな外見のわりに図々しい悪女ぶりが印象的だ。

 一事不再理で罪を逃れたエミリーに、最後に「薬の副作用」のリベンジをするバンクス。ジュード・ロウの一筋縄でいかない個性にふさわしい結末だった。
  【◎△×】7

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