ＨＯＭＥ│ ５０音表│ 午後の映画室ＴＯＰ
最高の人生の見つけ方
２００７年 アメリカ ９７分
監督
ロブ・ライナー
出演
ジャック・ニコルソン
モーガン・フリーマン
ショーン・ヘイズ
ロブ・モロー
ビヴァリー・トッド
Ｓｔｏｒｙともに余命わずかと宣告された初老の男性２人が、人生でやり残したことを実現しようと旅に出る姿を描くハート 
フル・ストーリー。『スタンド・バイ・ミー』『恋人たちの予感』のロブ・ライナーが監督、ジャック・ニコルソンとモーガン・フリーマンの名優２人が共演している。 カーター（モーガン・フリーマン）は家族のために人生を捧げ、地道に働いてきた自動車整備工、 我がままで傲慢なエドワード（ジャック・ニコルソン）は、一代で巨万の富を築いた実業家だ。 入院した２人は同室になり、ともに余命６ケ月から１年と宣告される。 カーターが “棺桶に入るまでにやっておきたいこと” を書き出した「棺桶リスト」を作っているのを見て、エドワードはそれを実行しようと言い出す。 意気投合した２人は病院を抜け出し、２人で書いた「棺桶リスト」を手に人生最後の旅に出るのだが・・・。 
Ｒｅｖｉｅｗ余命わずかと宣告された男２人がやり残した夢を叶えようと病室を脱出する話、というと思い出すのがドイツ映画『ノッキン・オン・ヘヴンズ・ドア』(97) だ。 海を見たことがない２人が、これじゃ天国にいってもみんなにバカにされる、というなんともシンプルな理由で病室を抜け出す。 ２人が病院の駐車場から盗んだのが大金を積んだギャングの車だったために、警察とギャングの両方に追われ、陽気な逃避行のさなかでも時折病気の激しい発作に見舞われる。 そして念願の海を見た時に主人公の一人に死が訪れる。 もう一人もまもなく逝くだろう・・・、そんな予感がしんみりした余韻となり、とても好きな映画だ。 この映画の主人公は若者だけれど、本作は演じるのがジャック・ニコルソンとモーガン・フリーマン、と正真正銘の老人だ。 これまでにやりたいことは大方し尽くして、おとなしく死を迎える準備をするのかと思いきや、やり残し 
たことはまだまだある、と若者顔負けの張り切りぶりにニヤニヤしたり呆れたり。「棺桶リスト」なる “死ぬまでにやっておきたいことリスト” の筆頭がスカイダイビングというのにまずびっくり。 余命半年から１年を宣告されたお年寄りには刺激が強すぎるんじゃない？ 心臓マヒを起こしたらどうするの、と思ってしまう。 カーターが直前でビビって大騒ぎするのに笑ってしまう。 この時は喜々としていたエドワードが、カーレースでカーターに遅れを取ってムッとするのにもクスリ。 一筋縄ではいかないニコルソンと人生の達人フリーマンの組み合わせが絶妙だ。 このあと２人はエドワードの自家用ジェット機で世界旅行に出かける。 もちろん “荘厳な景色を見る” などの目的があるにはあるけれど、今さら世界観光旅行映画でもあるまいに、と中盤はやや中だるみ・・・。 そんな中で、２人はそれぞれに来し方を振り返り、あらためて自分にとってもっとも大切なものについて気づいていく。 それが家族の絆や人とのつながりに収斂(しゅうれん)するのはありきたりの感が否めないけれど、 分かりやすいのはアメリカ映画らしいところともいえる。 手に負えない我がまま者だけど、どこか憎めないエドワードと、そんな彼を冷静に横目で見ながら笑いを抑えているようなカーターの、憎まれ口の叩き合いが面白い。 人は死んだらそれっきり、死後の世界なんてない、と強気の無神論者のエドワードが、 火葬がいいか土葬がいいか、で「（自分は）閉所恐怖症だから土葬は嫌」と本音を吐露するのには笑ってしまった。
一代で巨額の財産を築き上げた実業家と油まみれで実直に人生を過ごしてきた自動車修理工。 ふつうなら出会うことのなかった２人が偶然のことから人生最晩年の数ヶ月を共に過ごし、互いに心を開いていくさまは、 ロードムービーの定番とはいえ、やはり心に沁みるものがある。 忘れてならないのがエドワードの秘書トーマス（ショーン・ヘイズ）の存在だ。 慇懃(いんぎん)そうに控えながら、憎まれ口ではカーターに引けを取らない。ここぞというところで澄ました顔でぐさりと雇い主に一矢を報いる。 どうやらエドワードもこんな秘書が気に入っているらしい。２人のやり取りが可笑しくて、こちらもいいコンビといえる。 “やりたいことリスト” の最後に残っていた「ヒマラヤの山頂で荘厳な景色を見る」を叶えるのがこのトーマスというのは思いがけなかった。 彼がカーターとエドワードの遺灰を入れたナッツの缶を並べ、この項目に横線を引くラストに思いがけず胸がジンとした。 【◎○△×】6 |
