HOME50音表午後の映画室 TOP




猿の惑星:聖戦記(グレート・ウォー)


2017年  アメリカ  140分

監督
マット・リーヴス

出演
アンディ・サーキス
ウディ・ハレルソン
カリン・コノヴァル
アミア・ミラー
スティーヴ・ザーン

   Story
 『猿の惑星』新シリーズの最終章となるSFアドベンチャー。猿と人間の生き残りをかけた決戦で家族を奪われた猿 のリーダー、シーザーの復讐の旅と、彼の心の葛藤を描く。

 高度の知能を獲得した猿と人間との全面戦争が始まって2年、シーザー(アンディ・サーキス)率いる猿たちは人間との共存を模索し、森の奥深くひそんでいる。

 ある夜、大佐(ウディ・ハレルソン)率いる人間の特殊部隊に襲撃され、シーザーは妻と息子を失う。
 猿の群れを守るという自らの使命と家族を奪われた怒りのはざまに立つシーザーは、猿たちを安住の地に向かわせると、大佐を追う復讐の旅に出る。

 オランウータンのモーリス(カリン・コノヴァル)など数匹の猿が同行する。
 途中出会う口のきけない人間の少女ノヴァ(アミア・ミラー)も加わり、 さらにチンパンジーのバッドエイプ(スティーヴ・ザーン)の案内で一行は大佐のこもる巨大要塞に辿り着くが・・・。


   Review
 伝説のSF、『猿の惑星』(68) の前日譚として製作された3部作の最終作。冒頭でこれまでの流れが簡単に字幕で紹介され、本作自体が独立した話になっていることもあって、 前2作 (『猿の惑星:創世記 (ジェネシス)』『猿の惑星:新世紀 (ライジング)』) を見ていない私でも、差し障りなく鑑賞することができた。

 序盤、森の奥深く身をひそめる猿たちを人間の軍隊が襲ってくる。 いまや高度の知能を持つ猿たちが馬を巧みに操って森林を駆けめぐり応戦するサマがじつにカッコよく、身を乗り出して見入ってしまう。

 この時捕らえた人間の兵士を、猿のリーダー、シーザーは「我々は戦いを望んでいない」というメッセージを込めて、殺すことなく解放する。 思わず「甘い。人間はもっとずるくて冷酷だよ」と声を上げてしまう。そして残念ながら、案の定、なのだ。


 大佐率いる人間の特殊部隊に逆襲され、シーザーは妻と長男を殺される。
 この時の大佐を演じるウディ・ハレルソンの怪物的ともいえる不気味さに圧倒された。 ほんとに怖い! 高潔なシーザーが心を真っ黒に塗りつぶされ、復讐の権化になるのは無理もないよね・・・。

 猿の群れを安全の地に向かわせ、単独で大佐の足取りを追うシーザー。そして彼の身を案じ、同行するオランウータンのモーリス、ゴリラのルカ、チンパンジーのロケット。 人間よりもずっと人間らしい猿たちの絆にほろりとさせられる。

 大佐が立てこもる要塞に向かう途中、シーザー一行は口のきけない少女ノヴァに出会う。 さらに遠くで銃声音が響き、その後雪道で発見された瀕死の兵士もやはり口がきけない。
 この「言葉を発することができない」という状態は、人間の間に広がる感染症によって発症していたのだった。

 “言葉を失う → 思考ができない → 人類は退化し滅びる” という恐怖から、大佐は感染者はすべて、自分の息子ですらも、銃殺していた。 そして終盤、ノヴァの持っていた人形に触れたことで自分も感染したと知ると、自身に銃を向 け、自らの生に決着をつける。

 ある意味、見事。一見冷酷非情な大佐の多面性がストーリーの陰影を生み出しているように思える。

 話の先を急いでしまったけれど、要塞にたどり着いたシーザーは大佐に捕らえられ、 その上、安全の地に向かったはずの猿たちも捕らえられて、水も食料も与えられずに過酷な労働を強いられていた。

 ストーリーはこの辺りから彼らがいかにして要塞から脱出するかに絞られていく。
 夜陰に紛れ、猿たちは偶然見つけた地下トンネルを利用して檻から脱出、折から大佐に敵対する北の本軍が到着して、要塞は戦場と化す。

 そして、しらじらと夜が明ける頃には猿と人間の銃撃戦となり、ボーガン銃で撃たれたシーザーは深傷を負いながら燃料タンクを爆破・大炎上させ、 さらに大雪崩が起きて要塞も北の本軍も雪煙のなかに呑み込まれてゆく。次々に起こるスペクタクルはまさに迫力満点だ。

 『猿の惑星』からほぼ半世紀が経ち、何より驚いたのは本作の猿たちの造形の見事さだ。体毛豊かな外見、素早い動きはまるで本物の猿としか思えない。 それでいて表情 (とくに目の感情表現) がリアルで、彼らの内面が繊細に伝わってくる。 おかげでシーザーをはじめとする猿たちのキャラクターがくっきりと際立ち、感情移入を誘われる。

 群れを安住の地に導いたシーザーがモーリスに見守られながら静かに息を引き取るラストは、シリーズの集大成らしい深い安らぎが感じられた。
  【◎△×】7

▲「上に戻る」



inserted by FC2 system