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セブン・シスターズ


イギリス/アメリカ/フランス/ベルギー
2016年  123分

監督
トミー・ウィルコラ

出演
ノオミ・ラパス
ウィレム・デフォー
マーワン・ケンザリ
クリスティアン・ルーベク
ポール・スヴェーレ・ハーゲン
トミワ・エドゥン
グレン・クローズ

   Story
 『ミレニアム』シリーどのノオミ・ラパスが近未来の管理社会を舞台に1人で7つ子姉妹を演じるSFサスペンス。

 近未来の2073年。欧州連邦では資源の枯渇と人口増加による深刻な食糧難から、厳格な一人っ子政策が行われて いる。
 ここでは2人目以降の子供は児童分配局によって資源回復の日まで冷凍保存されることになっている。

 そんな中、セットマン家の7つ子姉妹(ノオミ・ラパス)は祖父テレンス(ウィレム・デフォー)によってひそかに育てられ、30歳まで生き延びてきた。

 7人は各曜日の名前をつけられ、それぞれ週1日ずつ外出して7人で一人の人格 “カレン” を演じることで当局の監視の目を逃れてきた。 ところがある日 “月曜” が帰宅せず、残りの6人は何が起こったのかを探り始める・・・。


   Review
 7人の人間があたかも一人の人間であるかのように演じ、振る舞うという発想が面白い。 性格も思考・行動様式も異なる別人格の人間なのだから、いくら外見がそっくりでもいつかどこかで綻びが出るんじゃないか、誰かが「変だ」と思いだすんじゃないか・・・、 それだけでもスリリングだ。

 そんな心理サスペンス映画を予想していたので、7つ子であることがなぜか誰かによって当局に通報され、抹殺部隊が派遣されて主人公たちがひたすら逃げかつ闘う、 といういってみればアクション映画なのは意外だった。

 主人公たち7姉妹の住む世界は極度にITが発達した超管理社会だ。
 住民たちはみなID確認用のリストバンドをし、露店でちょっとした買い物するのでさえIDチェックされる。アパー トの自室に入る時も眼球での本人認証が必要だ。

 近未来ディストピアは『ブレードランナー』をはじめいろいろな映画で描かれてきたけれど、こんなに息苦しさを感じたのは初めてだ。

 “カレン” という一人の人格を演じていた主人公たちが実は7つ子であることがばれると、即座に当局によって抹殺部隊が派遣される。

 どこにいても位置情報がコンピューターでキャッチできるので、姉妹の一人が追跡されると、 残りの姉妹が自宅のコンピュータールームで逃げ道を検索して内蔵マイクで伝える。

 しかしこれで逃げ切れる訳ではない。抹殺部隊もアンドロイドのごとき正確さで執拗にどこまでも追ってくる。 一切の人間臭さが排除され、一瞬の隙なく逃走と追跡・銃撃が続くのは見ていてちょっとしんどい。

 本作で気になるところはいろいろあるけれど、一番の難点はストーリー性が希薄なことかな、と思う。
 「誰」が「何のため」に7姉妹を当局に密告したのか・・・、これをもっと丁寧に彫り込むことで、ストーリーは深みとふくらみが増しただろうと思う。 素材が面白いだけに、そこがあっさりと処理されているのがもったいない。

 出勤・帰宅する “カレン” と毎日会話を交わすアパートの管理人エディ(トミワ・エドゥン)、銀行で彼女と昇進 争いをしているジェリー(ポール・スヴェーレ・ハーゲン)・・・。
 彼らが姉妹の秘密に気づいたのかな、とはじめは思ったけれど、2人とも早い段階で退場してしまう。

 後半突然登場した “カレン” の恋人エイドリアン(マーワン・ケンザリ)も、児童分配局の職員だけに怪しいと思ったけれど、違っていた。

 終盤、思いがけない形で、「誰」が「何のため」にが判明するけれど (“月曜” が双子を妊娠し、我が子を助けるために姉妹を密告した)、 残念ながらこれは私にはもう1つ説得力が薄かった。
 そうであるなら姉妹はみなで相談するのが普通だと思うし、当然姉妹間には葛藤や協力・離反が生じるだろうと思う。そのほうがストーリーに厚みも迫力も出る。

 さらに残念なのが、冷凍保存されているはずの子供たちが実際はどのような運命を辿っていたのか、ということだ。 「焼却」という残酷な形でなくても、児童分配局幹部ケイマン(グレン・クローズ)を失脚させる方法は、ストーリー上いくらでもあっただろうに、 とドローンとした気持ちになった。

 後味が悪くて、7役をこなしたノオミ・ラパスに敬意を表しつつも、元々の評価6点に−1で、5点評価です。
  【◎〇×】5

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