Story 19世紀に活躍した女流作家、シャーロット・ブロンテの古典的名作の映画化。 早くに両親を亡くし、過酷な境遇にさらされながらも、強い意志と聡明さで自らの運命を切り開いていくヒロインを力強く描いている。 両親を亡くしたジェーン・エア(アメリア・クラークソン)は、 伯母(サリー・ホーキンス)や寄宿学校の教師たちから冷たく理不尽な扱いを受けるが、決して屈しなかった。 学校を卒業したジェーン(ミア・ワシコウスカ)は、ソーンフィールドの由緒正しいロチェスター家で家庭教師の職を得る。 ある日ジェーンは、林の中で偶然出会った男性を落馬させてしまう。 それは、それまでずっと不在だったソーンフィールド邸の主・ロチェスター(マイケル・ファスベンダー)だった。 どこか暗くて気難しいロチェスターとジェーンは次第に心を通わせるようになり、 やがて彼は求婚しジェーンは幸せの絶頂にあったが、ロチェスターには大きな秘密があった・・・。 Review 公開時に見たフランコ・ゼフィレッリ監督の『ジェイン・エア』(96) は、 ジェインを演じたシャルロット・ゲンズブールと少女時代を演じたアンナ・パキンがとても印象に残って、もう一度見たいと思っていた。 本作もじつはその『ジェイン・エア』と勘違いして見てしまったのだけど、ヒロインを演じているのが若手の演技派、ミア・ワシコウスカと分り、 彼女がどうジェーンを演じてるのかとあらたな興味が湧いた。 美人とはいいがたいけれど、逆境に負けない意志の強さと、凛とした佇まいを持つジェーン。 ワシコウスカは額にいつも小さなしわを寄せて、一本調子になりそうなところだけど、そうならない。抑えた演技なのに内面の繊細な心の動きが伝わってくる。 きちんとジェーンの人物像を作り上げているのはさすがと思う。 ただ、ロチェスター役のマイケル・ファスベンダーはかなり微妙。好きな俳優だけど、本作ではハンサムすぎるのがマイナスに働いた気がする。 大きな秘密と苦悩を抱え、そこから逃れるように欧州中をさすらう、気難しくて近寄りがたい男にしてはちょっと翳りが薄かったような・・・。 ゼフィレッリ版は “ジェーン・エア” ものでは私がはじめて見た映画だったこともあり、印象が強くて、見てからずいぶん経つのについ同じイメージを追ってしまう。 たとえば本作でのジェーンが預けられるローウッド寄宿学校の描写が比較的あっさりしているのが物足りない。 親友ヘレンだけでなく、やさしい教師のことがもっと描かれていたら・・・、こうしたことがジェーンのその後の人生にどう影響したかがもう少し感じられたら・・・、 などと思ってしまうのだ。 ソーンフィールドの館の怪しい出来事も、私にはやはりあっさりしすぎる感じがする。 下手にゴシック・ホラー風になってもいけないし、かえって良心的な演出なのかな、と思ったりもするけれど、ロ チェスターの苦悩の原点なわけだから、もっと思い入れがあってもよかったんじゃないか・・・。 全体にさらりと駆け足気味のストーリー展開で、もう少しメリハリがほしい気がする。 そんな中で印象的だったのは、ジェーンとリヴァース家の交流が温かく細やかに描かれたところだった。 (荒地で行き倒れになったジェーンがリヴァース家の戸口にたどり着き、助けられる場面を冒頭に持ってきたために、 はじめ私の中で話が少し混乱してしまったけれど・・・。) リヴァース家の長男のセント・ジョン牧師を演じているのが『リトル・ダンサー』(00) のジェイミー・ベルと知ってちょっとびっくり。 ジェーンに心を寄せる微妙な陰影をとても巧く出している。 彼、『ディファイアンス』(08) でもしっかり存在感を示していた。地味だけど、いつの間にかいい俳優になっているなぁ、といささかの感慨・・・。 イギリスの荒寥とした風景はどの映画を見てもいつも心を惹かれる。本作も撮影が美しく、19世紀のイギリスに浸ることができた。 【◎○△×】6 |