Story モーガン・フリーマン、マイケル・ケイン、アラン・アーキンという3人のオスカー俳優たちの共演で、 年金消失という現実に直面した老人たちが銀行強盗に挑む様子を描いた人情犯罪コメディ。 ウィリー(モーガン・フリーマン)、ジョー(マイケル・ケイン)、アル(アラン・アーキン)は、長年同じ工場で働いて、退職後も親しい付き合いをしている。 ある日、会社の買収が発表され、年金の支払いが一方的に打ち切られてしまう。 その上ジョーは、住宅ローンの支払いはこれまでの3倍に、と銀行から通告を受け、自宅差し押さえの危機に直面する。 追い詰められた彼らは、これまでの平穏な生活を続けるために、思いがけない大胆な行動に出る・・・。 Review 以前、『団塊ボーイズ』(07) のちょっとバカバカしいタイトルにグフッとしたことがあるけど、“ジーサンズ” で久しぶりにまたグフッとした。 “爺さん” では身も蓋もないけど、“ジーサン” とカタカナ書きにすると不思議に愛嬌が出る。 演じる名優たちもすっかりいいお年寄りになって、でも本人たちは全然その自覚がなく、一発、銀行強盗をやらかそうというのだから愉快になる。 老人の強盗というと思い出すのが、ハンガリー映画『人生に乾杯!』(07) だ。主人公は年金だけでは暮らして行けず、郵便局強盗を思い立つ。 本作の主人公たちも長年勤め上げた会社の都合で年金を打ち切られ、おまけにジョーは住宅ローンの仕組みが変わ り、自宅の差し押さえまで食らってしまう。 共通しているのは、人生を真面目に働き、老後はつましく暮らしていた老人たちが、理不尽な現実に出会って強盗を思い立つことだ。 犯罪とはいえ、善良な人が追いつめられた挙げ句の選択だけに、「じいさん、頑張れ!」とエールを送りたくなる。 日本でも、老後は年金に頼らずに自前で2000万円を用意すべし、と言わぬばかりの金融庁の報告が出て、国中に激震が走ったのはつい先ごろのことだ。 高齢化、年金問題は今や国を問わず、世界共通の課題なんだな、とあらためて痛感したりして・・・。 笑ってしまうのが、予行演習としてスーパーで万引きをすることだ。 アルが逃走用の車で待機し (ところが彼、自分の役回りを全然分かってない!)、 ジョーとウィリーが背広の内側やズボンに品物を隠して、誰が見てもすぐそれと分かる格好で店内をうろちょろする。 こんなんで大丈夫かなぁ〜、とマジで心配してしまうけど、いざ本番となるとけっこう堂に入った強盗ぶりだ。 それというのも、ジョーが住宅ローンの相談で銀行に行った時、偶然銀行強盗に遭遇して、彼らのやり方を逐一目撃したからだ。 それに、娘婿の紹介で知り合った怪しい男ヘースス(ジョン・オーティス)に懇切丁寧なレクチャーを受けてもい る。 (これが後でオチにつながり、またもクスリとさせられる。) 老人クラブのイベントを利用したアリバイはバッチリ。 ウィリーのかぶったマスクを危うく剥がしかけた女の子は、面通しではウィリーとのひそかな友情(笑)を守って、上手に捜査官をはぐらかしてくれた。 こうしてはじめての強盗は大成功。 逃避行に入った『人生に乾杯!』の主人公夫婦にはほろ苦い結末が待っていたけれど、本作はアメリカ映画らしくほのぼのしんみりのハッピーエンドだ。 主演のマイケル・ケイン、モーガン・フリーマン、アラン・アーキン、3人のオスカー俳優の肩の力を抜いた演技が心地よい。 老人ならではの自虐ギャグとゆるい空気感が味わいある風格となっている。 老人クラブのリーダーとはいいながらちょっとボケの入ったクリストファー・ロイドや、ツメが甘いのになぜか緊張感をかもし出すFBI捜査官のマット・ディロン、 アラン・アーキンにちょっかいをかけて、とうとうゴールインに持ち込むいつまでもキュートで色っぽいアン=マーグレット、と脇役もそろい、なかなか楽しかった。 【◎○△×】6 |