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スパルタカス


1960年  アメリカ  184分

監督
スタンリー・キューブリック

出演
カーク・ダグラス
ジーン・シモンズ
ローレンス・オリヴィエ
チャールズ・ロートン
ピーター・ユスティノフ
トニー・カーティス

    Story
 紀元前一世紀のローマ帝国を舞台に、反乱軍を組織した剣闘士スパルタカスの闘いを描いたスペクタクル史劇。ア カデミー賞でピーター・ユスティノフの助演男優賞など4部門で受賞した。

 紀元前73年のローマ時代。
 灼熱の太陽の下、鉱山の重労働に従っていた奴隷のスパルタカス(カーク・ダグラス)はその反抗的な気質を見込まれて、 剣闘士養成所主のバタイアタス(ピーター・ユスティノフ)に買われる。

 ある日、ローマの大物クラッスス将軍(ローレンス・オリヴィエ)が訪れ、好意を抱いていた女奴隷バリニア(ジーン・シモンズ)が彼に売られてゆくのを見て、 スパルタカスの怒りが爆発、反乱軍を組織する。

 反乱軍はつぎつぎに貴族の所領を襲って奴隷を解放し、ベスビアスの山腹に本拠をかまえる。
 一方ローマでは、元老院保守派クラッススと民衆派グラックス(チャールズ・ロートン)が主導権を争っていた。


   Review
 古代ローマで奴隷によって起こされた反乱はたったの一度だそうだ。それがスパルタカスの乱。

 ローマ帝国時代がどれくらい続いたのかはっきりとは知らないけれど、何百年か、相当長かったのはたしかだ。その間(かん)にたった一度。 それだけ帝国の力が強く奴隷への抑圧も厳しかったということなのだろうか。
 (その後、塩野七生著「ローマ人の物語」で知ったのだけれど、実際は逆で、ローマ人の奴隷に対する扱いは寛容で、 奴隷の中に大きな不満が生じなかったことが原因らしい。これも意外だった。)

 スパルタカスの乱が失敗に終わり、反乱に加わった大勢の奴隷がアッピア街道沿いに十字架刑に処せられたことは私も知っている。
 十字架刑はひと思いに殺すのではなく、何日もかけて極度の苦しみを与えながら死に至らしめる処刑法だ。 40年ほど前はじめてイタリアに行った時、アッピア街道でここに奴隷たちの呻吟の声が満ちたのかと思ったら、空がすっと暗くなった気がしたのを覚えている。


 そんな訳でちょっとおっかなびっくりの鑑賞だったけど、この映画で初めて知ることも多く、とても面白かった。

 炎天下の重労働に酷使されていたスパルタカスが、逞しい肉体と強い闘争心を見込まれて買われたのが、剣闘士養成所だ。 剣闘士といえばはじめから剣が強くて、闘いの技を身に着けているのだと何となく思っていたけれど、 ここで仕込まれて、一人前の剣闘士になるのだ。「養成所」とはよくいったものだと思う。

 その訓練方法が凄い。太い横木が上下に2本互い違いに突きだした棒がぐるぐる回る。上の横木が当たれば頭骨が一遍に潰される。腰を低める。 その間に下の横木が脚を払う。もろに当たれば脛が折れる。
 一瞬の気の緩みも許されない。この訓練だけで大怪我をしたり落命する者も多かったんじゃないか、と見ているだけで命が縮む。

 身体に濃い絵の具で印をつけて、どこを攻撃すれば相手に重傷を与え、あるいは軽傷ですませるられるのか (これは、相手をじわじわ弱らせて、 最後にとどめを刺すためなのだけれど) のレクチャーもある。
 当然これはほかの養成所でもしていることだから、相手もこうして自分の急所を狙ってくることを意味する。

 剣闘士というと闘技場で闘うシーンばかりをイメージしてしまうけれど、そこに至るまでがすでに想像以上の厳しさだ。

 反乱軍は一時は10万を超える人数になったという。しかし、それには戦闘員だけではなく、女・子供・老人も含まれているのは意外だった。

 彼らがキャンプで日常生活を営みながら、イタリア南部の脱出港を目指してぞろぞろ移動していくさまは、まるで難民のようだ。 闘いということだけを考えるなら足手まといになりそうな、こうした弱い者たちを護るという思いが、反乱奴隷たちの戦闘意欲を支えていたのだろうか。

 最後の将軍クラッススとの闘いで敗れはするけれど、それまではかの大ローマ帝国の戦闘部隊を相手に勝利を収めているのだから驚かされる。

 出演陣はカーク・ダグラスをはじめ、ローレンス・オリヴィエ、ジーン・シモンズ、トニー・カーティスと錚々たる顔ぶれだけど、 何といっても印象が強いのは、養成所を仕切るバタイアタスを演じたピーター・ユスティノフだ。

 小心なくせに計算高く、小狡くて、保身の術に長けている。ほんとにいやな奴だけど、何故か憎めなかったりもする。アカデミー助演男優賞も納得の存在感だった。
  【◎△×】7

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