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デューン/砂の惑星


1984年  アメリカ  137分

監督
デヴィッド・リンチ

出演
カイル・マクラクラン
フランチェスカ・アニス
シルヴァーナ・マンガーノ
ホセ・ファーラー
ショーン・ヤング
ケネス・マクミラン
ディーン・ストックウェル

   Story
 フランク・ハーバートのベストセラー小説の映画化。“デューン” と呼ばれる砂漠の惑星を舞台に繰り広げられる惑星間の勢力争いを描く。

 遥か未来の宇宙では、人類が惑星間帝国を築きあげ、宇宙皇帝(ホセ・ファーラー)、惑星間輸送を独占する宇宙 ギルド、大公家連合の3勢力に分裂していた。

 砂漠の惑星アラキスは不老不死の薬草メランジの唯一の産出星だ。

 莫大な富をもたらすこの星の領主となったアトレイデス家の王子ポール(カイル・マクラクラン)は、 宿敵ハルコネン男爵(ケネス・マクミラン)の策略で父レト・アトレイデス公爵を殺される。

 母レディ・ジェシカ(フランチェスカ・アニス)とともにかろうじて窮地を脱したポールは、砂漠の民フレメンに救われる。

 やがて命の水を飲んで砂漠の巨大生物 “砂虫” を自在に操る力を得たポールは、フレメン女性のチャニ(ショーン・ヤング)を妻に迎え、 フレメンたちを結集して、ハルコネンを倒すために立ち上がる。


   Review
 『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズでも字幕のカタカナの名前を読むのに初めはエライ苦労したけれど、 本作も4つの惑星、それを支配する領主たち、さらに女性だけの宗教結社、とあげればキリがないほど次々出てきて、もう大変。
 自慢じゃないけどカタカナの長い名前を読むのが苦手な私、あたまの3,4文字くらいではしょらないと、とうてい字幕全部は読みきれない。

 そんな訳でストーリーについて行けずはじめはちょっと疲れたけれど、見ているうちに一見複雑な筋立てが、ほんとはとてもシンプルなのに気づいた。 要は、アラキスと呼ばれる砂の惑星で採れる貴重な薬草を巡って、アトレイデス家とハルコネン家が勢力争いをするという話だ。

 善玉、悪玉がはっきりしていて、主役のアトレイデス家の王子ポールが善玉で、敵対するハルコネン家は悪玉だ。 ポールはハンサムでハルコネン家の当主の風貌はグロテスク、と外見も判り易い。

 といっても、宇宙皇帝(というからには最高権力者かと思ったら)が惑星間の輸送を独占する宇宙ギルドの使者に、ポールを殺せ、と命令されたりして、 力関係がよく分からない。

 女性だけの宗教結社ベネ・ゲセリットとはどういう存在で、その教母(シルヴァーナ・マンガーノ)が惑星間帝国にどういう影響力を持っているのかもよく分からない。

 原作は膨大な大長編らしい。その辺りはきっと丁寧に描かれているのだろうけど、ダイジェスト的にまとめられた映画で説明不足になるのは仕方ないかもしれない。

 『スター・ウォーズ』シリーズ的なアクション・ファンタジーを予想していた私には、モノローグを多用して登場人物たちが内面を吐露するのが新鮮に思える。
 互いに絶えず疑心暗鬼になり、相手の思惑を疑う。 屋外シーンがあまりなく、登場人物の衣装も室内の佇まいも中世のようなダークな雰囲気なので、こうした心理戦っぽいムードはよく合っている。

 面白かったのは、ポールの母レディ・ジェシカがお抱え医師ユエ(ディーン・ストックウェル)を、信頼できる、と独白するところ。額の赤い印がその証拠、と。

 ところがその印がいやに禍々しい。ほんとかな・・・、と思ったら、彼はやはり裏切り者だった。
 でもそれは、ハルコネンに妻を殺され、彼に復讐するためにアトレイデスを利用しようとしたためなのだ。 こうなるとハルコネンに見抜かれ殺される彼が哀れに思えてもくる。


 巨体を宙に浮かせ、遊泳するハルコネンの憎々しさが抜群だ。

 砂の惑星アラキスの原住民フレメンには、いつか救世主クイザッツ・ハデラッハが現れるという信仰があって、それが命の水を飲んだポールだ、 というところで、『マトリックス』のネオが最後に救世主になるのを思い出した。
 欧米には何かそうした救世主思想でもあるのかな・・・。

 繰り返し表われる水面にしたたり落ちる水滴のスローモーションが美しい。グロテスクなビジュアルが多いだけに、幻想的に思えて、もっとたくさん見たかったと思う。
 巨大な砂虫は造形が今1つ。もう少し魅力のあるデザインを工夫してほしかった。
  【◎△×】6

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