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友だちのうちはどこ?


1987年  イラン  85分

監督
アッバス・キアロスタミ

出演
ババク・アハマドプール
アハマッド・アハマドプール
ホダバフシュ・デファイ
イラン・オタリ
ラフィア・デファイ

   Story
 友だちのノートを間違って家に持ち帰ってしまった少年が、ノートを返すために、隣の村に住む友だちの家を探し 歩く姿を描いた映画。イラン映画の水準の高さを世界に示したアッバス・キアロスタミ監督の “ジグザグ道3部作” の第1作。

 イラン北部のコケール村の小学校。
 モハマッド(アハマッド・アハマッドプール)は宿題をノートではなく紙に書いて、先生(ホダバフシュ・デファイ)に叱られる。 「これで3回目だぞ。今度したら退学だ」と。

 隣の席のアハマッド(ババク・アハマッドプール)は家に帰ってみると、自分のと一緒にモハマッドのノートも持って帰っていたことに気づく。

 口うるさい母(イラン・オタリ)の目を盗んで家を出たアハマッドは、ノートを届けようとモハマッドが住む隣のポシュテ村まで走るが・・・。


   Review
 「何度いったら分かるんだ。もう△回目だぞ。今度やったら〇〇だからな」、これは大人が子供を脅しつける時の万国共通の常套句だ。
 △は “仏の顔も三度まで” じゃないけど、「3」がやっぱり多いかな。 アハマッドの友達モハマッドも3回、同じ過ちをして (といっても宿題をノートじゃなく紙にしてきただけなのにね)、先生に叱られる。

 〇〇は子供が怖がることに相場は決まっている。アハマッドの先生の場合は「退学させるぞ」。 もちろん、「それくらい先生は怒ってるんだぞ」という意味だけど、そのまま受け止めてしまう子供にはこれは強烈だ。

 子供が何度も同じ誤りをするのはそれなりの事情があるからだ。 表紙の絵柄がそっくりで、前の日、従兄弟がモハマッドのノートを間違えて持ち帰ってしまったのだ。そして叱られたその日は、アハマッドがそれをやってしまう。

 先生はほんとうは区別が付くよう工夫するように指導すべきなんだけど、 本作に登場する大人たちは揃いも揃って子供の事情なんてまるきり斟酌(しんしゃく)しない。子供であるのもなかなかの難事業なのだ。


 帰宅したアハマッドは宿題をしようとして、ノートが2冊あるのに気づく。
 さ〜大変、今日中に返さないと、モハマッドは退学させられる。

 手伝いをしなさい、宿題をしなさいと口うるさい母親に事情を説明するけれど、まるで聞いてもらえない。
 アハマッドは隙きをみて家を出ると、モハマッドの住む隣のポシュテ村まで走る。ジグザグ道の丘を越え、森を抜けて、これがけっこう遠いのだ。

 やっとたどり着いても、村は4つの区に分かれていて、モハマッドの住む地区が分からない。 色んな人にモハマッドの姓「レザ・マツァデ」を尋ねては、素っ気なく「知らないね」といわれる。
 偶然別の同級生に出会い、教えてもらって行ってみると、5分前に父親とアハマッドの住むコケール村に出かけたばかりだという。アハマッドはまたもと来た道を走る。

 村にもどると、お祖父さんはアハマッドの言い分には耳を貸さず用を言いつけるし、 ポシュテ村から来た鉄の扉作り職人はメモ紙代わりにモハマッドのノートから強引にページを1枚むしり取る。

 あー、もう、なんて理不尽な〜! それでもアハマッドはめげない。
 扉作り職人がレザ・マツァデという名前だと分かると、ロバに乗って帰る彼を追いかける。ひたすら走る姿がいじらしい。

 ポシュテ村の彼の家には同じくらいの歳の男の子がいた。あー、やれやれ、と安堵したのも束の間、その子はモハマッドではなかった。

 いつの間にか日が暮れて、物知りのお爺さん(ラフィア・デファイ)が教えてくれたのがさっきの子の家と分かった時のアハマッドの落胆・・・。 お爺さんは彼の言葉に耳を傾けてくれた唯一の大人だけど、何の助けにもならなかったのだ。

 でも、子供って強いな、とつくづく思う。疲れ切ったアハマッドは、それでも家に帰ると宿題をする。
 扉が強風で吹き開けられ、不吉な予感が画面にみなぎるけれど、アハマッドは黙々と宿題をし続ける。

 翌日、ノートがないモハマッドは机に顔を伏せ、早くも半泣き状態だ。そんな彼に、遅刻してきたアハマッドがそっとノートを渡し、「宿題はしてあるよ」という。
 先生が一人一人、宿題を点検する。そしてモハマッドのノートを見て「よろしい」という。

 ここでポンと映画は終わる。その向こうにアハマッドとモハマッドのパッと輝く顔が目に浮かぶ。
 ノートに挟まれた押し花のさり気なさ・・・。子供のけな気さと大人の理不尽さを対比させつつ、最後はほんわり微笑が湧いて、いい映画だった。
  【◎△×】7

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