【 新作映画 2015年 】 |
Story 1920年代の南フランスを舞台に、霊能力を持つ女性占い師とそのトリックを暴こうとするマジシャンの恋の駆け引きを描いた、小粋なロマンチックコメディー。 ステージで華麗なイリュージョンを披露して喝采を浴びるマジシャン、スタンリー(コリン・ファース)は、魔法や超能力など信じない超合理主義者の皮肉屋だ。 そんな彼が友人のハワード(サイモン・マクバーニー)から、大富豪を虜にしている美人占い師の正体を暴いてほしいと依頼される。 早速南フランスの富豪宅を訪ねたスタンリーは、占い師ソフィ(エマ・ストーン)が発揮する透視能力に驚かされるばかり。 その上、可憐で天真爛漫な彼女にすっかり魅了されてしまい・・・。 Review ウディ・アレンは私にとっては比較的はずれが少なく、安心して見ることが出来る監督の一人だけれど、今回ばかりは少々残念だった。 出だしは悪くない。満員の観客を前に見事なパフォーマンスを披露する天才マジシャンが、古くからの友人から奇妙な頼みごとをされる。 「驚異的な霊能力を発揮して資産家階級の人気を博している女性占い師がいる。トリックがあるはず、と自分は睨 んでいるけれど、どうしても分からない。あらゆるトリックに精通している君ならば、見破れるのではないか」というのだ。 マジシャンがペテン師の正体を暴く、――この設定はそうとう面白い。さすがアレン監督、いいところに目を付けたと思う。 この占い師を、たとえば若き日のベット・ミドラーが演じるなら、騙し騙されの壮絶な駆け引きが繰り広げられて、爆笑コメディになりそうだ。 しかしアレン監督、占い師役に持ってきたのは楚々とした風情のうら若き美人、とてもペテン師には見えない。 しかも、「あ、きたきた、波動が・・・」とかいって額に手をあて、その後、ピタリピタリと貿易商を装ったマジシャンの正体を暴いていく。 彼女、ほんとに本物じゃないの? 予想と違うほうに流れていくストーリーが、これはこれで面白い。 しかし、マジシャンが可憐な占い師に惹かれ始める辺りから、ストーリーが停滞し始める。 マジシャンに扮したコリン・ファース、若い女性相手に恋物語を演じるには、ちょっともう、歳が行き過ぎているんじゃないかなぁ・・・。 占い師役はエマ・ストーン、童顔の彼女と並ぶとどう見たって父娘だもの。 アレンが自作で主演も兼ねていた頃、「ラブストーリーはもう苦しいな」と見ていて感じ始めた時がある。(「スコルピオンの恋まじない」(01) だったか・・・。) 彼も自覚があったのか、その辺りから主役に若い男優を持ってくることが増えたけれど、 せかせかとアレン流の落ち着きのない台詞回しは「アレンの身代わりね」と大いに感じさせられたものだ。 本作のコリン・ファースも演技はその伝を踏んでいるけれど、それにしても少々薹(とう)が立ちすぎたかな・・・。 気むずかしいばかりで、あまり魅力が感じられない。 じつをいうと、途中、中だるみで眠気が差したけれど、どんなオチに着地するのかな、という興味で見続けた。 軽いどんでん返しで、まーまー想定内の結末。 この映画は、変にラブストーリー絡みにしないで、占い師は果たして本物か、の本道を (アレン流の皮肉なひねりを加えつつ) 進むべきだったんじゃないか、と思う。 【◎○△×】6 |