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【 新作映画 2015年 】

海街 diary


2015年  日本  127分

監督
是枝 裕和

出演
綾瀬 はるか、長澤 まさみ
夏帆、広瀬 すず、風吹 ジュン
堤 真一、大竹 しのぶ
リリー・フランキー

   Story
 吉田秋生のベストセラー・コミックを実写化したドラマ。
 海の見える街で暮らす3姉妹が、父親がほかの女性ともうけた異母妹を迎え入れ、日々の暮らしの中で家族としての絆を紡いでいく様子を、 四季折々の美しい風景とともに綴っている。

 鎌倉の古い家に暮らす幸(綾瀬はるか)、佳乃(長澤まさみ)、千佳(夏帆)のもとに、15年前に家を出て行ったきりの父の訃報が届く。

 山形で行われる葬儀に参加した3姉妹は、父がほかの女性との間にもうけた異母妹すず(広瀬すず)と初めて対面する。

 身寄りがいなくなった暮らしにも気丈に振る舞うすずだが、彼女の今後を心配した幸は、鎌倉で自分たちと一緒に暮らさないかと持ち掛ける。 こうしてすずを入れた鎌倉での4姉妹の生活がスタートする・・・。


   Review
 鎌倉の古い家に肩を寄せてひっそり暮らす4姉妹。長女・幸はしっかり者で少々堅苦しく、責任を自分から背負い込むタイプ。生き方を自分で狭めているような損な性格だ。
 彼女を見ていて「あ、同じだ」と思った。私は次女だけれどいろんな事情から長女的で、気は好いけれどちょっとルーズでいい加減な姉が、次女的な存在だったのだ。

 幸の買ったばかりの服を次女の佳乃が着ようとして喧嘩するシーンには笑ってしまった。高校生の頃、まったく同じことがあったからだ。 アイロンをかけてタンスにしまったはずのブラウスが、ポンと乱れ籠に放り込んである。もちろん、姉の仕業だ。
 「ごめ〜ん。着るものがなかったから」、これで女だてらにつかみ合いの喧嘩、今になると可笑しくも懐かしい思い出だ。 こんな私たちはとても仲がいい。人生、終末にかかって一番の親友は姉だ。

 私は2人姉妹だけど、3女の千佳の、すぐ角突き合わせる姉たちを適当に取りなしながら自分はマイペース、という立ち位置は「さもあろう」とよく分かる。

 2人なら煮詰まりがちでも、第3の存在があれば空気の流通がよくなるのはよくあること。 彼女が程よい潤滑油になって、三人三様の暮らしぶりは、家族ならではの遠慮のなさとそれだからこその温かさがある。

 ここに、15年前に妻子を捨てて家を出た父親と愛人の間にできた、父の忘れ形見の4女すずが加わり、姉妹の暮らしに小さな変化が生まれる。 といってもドラマティックな事件が起こるわけではなく、1つ1つはどれもとてもさり気ない。

 姉妹が夏の夜、庭で線香花火に興じるシーンある。中学生くらいの年頃って、チカチカ賑やかに輝いてはしゅんと消えていく線香花火みたいなところがあるな、と思う。 元気だけどまだどこか心許なくて、でもいっときも同じ時がなく変化する。
 大人だけの暮らしってだいたい決まりきっている。そこにこの年頃 (の子供) が新鮮な空気をもたらし、そしていつの間にか大人も変化 (時に成長) する。

 すずはこれまでずっと自分の居場所がなかった少女だ。母が亡くなり、父が再々婚して継母との暮らし、そして父 の死後は異母姉たちに引き取られ・・・。

 転校先の学校ではサッカークラブで走り回り、一見屈託はないけど、「私はここにいていいんだろうか」という思いをいつも抱いている。
 そんな翳りを、スッとこらえた中に感じさせる広瀬すずがけな気で愛らしい。

 父親は、長女・幸にとっては自分たちを捨てた、優しいだけが取り柄のダメな人。3女・千佳は父が家を出た時のことは幼すぎてよく覚えていない。 すずにとっては自分が最期を看取ったかけがえのない人だ。画面に一度も登場しない父親が、姉妹たちの思いの中で徐々に立体的な形をもって浮き上がってくるのが印象的だ。

 1年が経ち、看護師の幸は不倫を清算してターミナルケアに専心する決意をし、信金の行員・佳乃は「男と酒のため」と豪語していた仕事の本来の意義に目覚め、 衣料店の店員・千佳は風采の上がらない恋人との関係を大切に育む。そしてすずは、父や母のことを素直に口にして姉たちと共有できるようになる。

 ゆるやかな時の流れの中で、家族としてしっくり寄り添う4人姉妹。古都・鎌倉を彩る四季が美しく、穏やかな安らぎに満たされた。

  【◎△×】7

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