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【 新作映画 2017年 】

家族はつらいよ 2


2017年  日本  113分

監督
山田 洋次

出演
橋爪 功、吉行 和子
西村 雅彦、夏川 結衣
中嶋 朋子、林家 正蔵
妻夫木 聡、蒼井 優
小林 稔侍、有薗 芳記
風吹 ジュン

   Story
 『東京家族』の平山家の8人が、そのまま平田家として出演した喜劇『家族はつらいよ』の続編。 主人公夫婦の熟年離婚の危機から数年後の平田一家の悲喜こもごもを描いている。

 東京の郊外に暮らす3世代同居の平田家。当主の周造(橋爪 功)はマイカーのドライブが趣味だ。
 高齢者の事故を心配する長男・幸之助(西村 雅彦)は運転免許証を返上させようと画策し、へそを曲げた周造はますます意固地になって運転を続ける。

 妻・富子(吉行 和子)の北欧旅行をいいことに、行きつけの居酒屋のおかみ・かよ(風吹 ジュン)を誘ってドライブを楽しんでいた周造は、 工事現場で車の誘導をする高校時代の同級生、丸田(小林 稔侍)に偶然再会する。40数年ぶりに一緒に酒を飲み、丸田を自宅に泊めた周造だが・・・。


   Review
 いつ運転免許を返納するか、は今や日本のどの家庭でも切実な問題じゃないだろうか。 高齢者にとって自分の問題なのは当然として、それより若い世代だって親がそこそこ高齢だったり、やがてはなるだろうから。

 これだけ始終高齢者が起こす自動車事故 (道路逆走やらブレーキとアクセルの踏み間違いやら) が報道されると、明日は我が身、 とても他人事(ひとごと)とは思えない。

 さいわい我が家は息子夫婦が乗り出すまでもなく、80歳を目途に返納しようか、と夫婦で話し合っているけれど、 その後は一応町なかに住んでいるとはいえ不便だろうな、とそれなりの覚悟はしなければならない。

 しかし本作の肝は、周造の起こす軽い接触事故と長男・幸之助が招集する平田家恒例の家族会議の間にサンドイッチのように挟まった、周造の旧友・丸田のエピソードだ。

 高校時代の同級生で長いこと消息不明だった丸田が、道路工事現場で車の誘導をしているのに、周造は偶然に出くわす。

 いいとこの坊っちゃんで、ハンサムで、女の子に人気のあった彼が、73歳の今、悠々自適の周造とは対照的に炎天下で汗をカキカキ誘導棒を振っている。
 う〜ん、これは周造ならずとも、同年輩の者ならば同級生のあの人この人を思い起こして、ちょっとショックな出来事だろうなと思う。

 聞けば事業に失敗し、妻には去られ、娘とも縁が切れて、今は侘しい一人住まいらしい。
 高齢者の孤立化、という現代日本の抱える課題があぶり出されて、気楽に笑ってばかりもいられない。 そこは山田監督、ドタバタやくすぐりを交えて、ムードは重苦しくないけれど。

 家族会議で集まった平田家の面々のジャブの応酬的やり取りは、一々メモに書き取りたいくらい面白い。 シリーズ2作目 (メンバー8人の顔合わせは『東京家族』(12) を含めれば3作目) とあって、息がピッタリあって、自分もそ の場にいるような臨場感だ。

 とくに、一緒に痛飲したあと周造に連れられて平田家に泊まった丸田が急死しているのを知った時の一家のパニックぶりは、(申し訳ないけど) 笑ってしまった。

 救急車が来て丸田の死を確認し、「じゃ、私らこれで引き上げますので」といわれて、「あ・・・、死んだ人、連れて行かないんですか・・・」と慌てたり、 警察が来て事件性の有無を調べると告げられて、「え、事件・・・!」と思わず立ち上がったり、どれもこれも私もやりそうだ。

 とくに「事件性」云々の場面は、「え! 殺人 !?」「私ら、容疑者?」と頭の中で勝手に連鎖反応がクルクル回り、一家が動転しているのが手に取るように伝わってくる。 当事者ともなればそんなものだろうな・・・、と共感しながらも、やっぱり笑ってしまう。

 その後の火葬場のハプニングは予め予想がつくけれど、それでもつい、プフッとしてしまう。
 赤の他人の急死を迷惑に思いながらも無下には出来ない平田一家の人情に、家族って面倒くさいけどやっぱり悪くないな、という思いが湧いてくる。

 高齢化問題と無縁社会、とテーマはけっこう重いけれど、軽やかに仕上げた山田監督の手腕はさすがだった。
  【◎△×】7

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