【 新作映画 2018年 】 |
ゴースト・ストーリーズ |
/英国幽霊奇談 |
Story イギリスのヒット舞台劇を、原作者のアンディ・ナイマン、ジェレミー・ダイソンが自らの手で映画化。監督のアンディ・ナイマンは教授役も兼ねている。 オカルト否定派の心理学者が超常現象を検証するうちに、自らが飲み込まれていく恐怖の体験を描く。 オカルト否定派として数々の超常現象のトリックを暴いてきた心理学者のフィリップ・グッドマン教授(アンディ・ナイマン)のもとに、 長らく消息不明となっていた先輩学者ジェームズ・キャメロン博士(マーティン・フリーマン)から、ある依頼が舞い込む。 それは、倉庫の夜間警備員(ポール・ホワイトハウス)、 両親との関係に問題を抱える若者(アレックス・ローサー)、 貿易商として成り上がった地方名士(マーティン・フリーマン)。 彼らの体験した超常現象を調査してほしいというものだった。グッドマンは怪奇現象のトリックを解明するために、彼らに直接話を聞く旅に出るが・・・。 Review 昔から夏はお化けや幽霊話で盛り上がることに決まっているけれど、幽霊好きはイギリスも引けを取らない。 昔観光でロンドンに行った時、幽霊スポット探訪のナイトツアーの看板を見かけた。集合場所や時間や参加料金が書いてある。 まずはロンドン塔よね、他にどこに行くのかな、と興味を感じたけど、結局参加しなかった。今になると少し惜しかった気も・・・。 ところでNHK・BSに (不定期だけど)「幻解! 超常ファイル」という番組がある。 UFOやネッシーや心霊写真や怪現象や・・・、その他諸々、世界中の超常現象を取り上げて、トリックや正体を科学的にあるいは心理的観点から検証する。 もちろん解明出来ないものもたくさんあるけれど、検証の過程自体がなかなか面白い。 本作も、これまで数々の超常現象のトリックを暴いてきた心理学者が、敬愛する先輩学者に依頼されて、年齢も職業も異なる3人の男性の体験を検証しようとする。 それだけで何となくワクワクしてくる。 1つめは、かつては女性専用の精神病院で、今は倉庫として使われている建物の元夜間警備員のケースだ。 突然停電し真っ暗闇。電灯の明かりが届く範囲しか見えないというのは、それ以外の闇がひどく不気味に思えて怖いものだな・・・、とあらためて思う。 このケースで妙に印象に残ったのは、警備員の娘が “閉じこめ症候群” という病気で入院中ということ。 見舞いに行っていないことを悔やむ警備員に触発されて、心理学者もホームに入所している疎遠だった父親を見舞う。 2つめのケースでは、受験に失敗した若者が、父親の車を無断で無免許運転し、深夜の森で異常な体験をする。 しかしそれ以上に印象的なのは、彼が運転中に携帯で両親と交わす会話だった。 両親は2人とも (特に父親が) 息子に対して無理解で、ひどく威圧的だ。息子が親に責められないように嘘に嘘を重ねて、心理的に追い詰められて行く様子がリアルだ。 心理学者は若者の家で見覚えのあるトンネルの写真を見つけ、さらに現場検証で出かけた森の中で、自身のドッペルゲンガーに出会う。 3つめは、妻が出産で亡くなった成り上がりの地方名士のケースだ。 彼が目撃するのはポルターガイスト現象だけれど、それとは別に妙なことを口にする、「妻は生まれた子を見ないで亡くなったのは幸せだった」と。 子供は異形のものだったのだろうか・・・。 しかも、彼は心理学者の目の前で、突然、銃口を顎に当てて自殺してしまう。これにはもう本当に驚いた。 心理学者はその直前、荒涼とした丘陵の一本道の向こうにフードをかぶった黒い姿が現れるのを目撃する。 この三題話、どうオチがつくんだろう、と思いつつ映画を見ていたのだけど、その後の展開はまった思いがけないものだった。 ネタバレになるのでこれ以上は書けないけれど、序盤、心理学者が先輩学者の住むトレーラーハウスの前のベンチで海を眺めていると浜辺に現れる3人の少年も含めて、 全編にばらまかれた伏線が収束し、1つの流れになっていく。そこで立ち上がってくるのは、心理学者自身の秘密だ。 トレーラーハウスの壁が破られた時、過去のトラウマから彼を守っていた幻想が崩れて現実があらわになってくる。 トリック映画を超えた悲哀が残り、いい意味で予想を裏切られた映画だった。 【◎○△×】7 |