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【 新作映画 2020年 】

SKIN 短編


2018年  アメリカ  21分

監督
ガイ・ナティーヴ

出演
ジョナサン・タッカー
ジャクソン・ロバート・スコット
ダニエル・マクドナルド
アシュリー・トーマス

   Story
 ガイ・ナティーヴ監督が、長編『SKIN/スキン』の趣旨を理解してもらい出資を募る意味で製作した短編。

 黒人への人種差別を子供の視点を織り交ぜて描いた本作は大きな反響を呼び、『SKIN/スキン』は企画立ち上げ後7年の時を経て、製作が実現した。 本作はアカデミー短編映画賞を受賞。

 ネオナチの父親ジェフリー(ジョナサン・タッカー)は仲間との野外集会で幼い息子トロイ(ジャクソン・ロバート・スコット)に射撃を教える。

 スーパーマーケットで黒人男性(アシュリー・トーマス)がトロイと微笑を交わし合うのを目撃したジェフリーは、激怒し、言いがかりをつけて黒人男性に暴行するが・・・。


   Review (ネタバレあり)
 本編『SKIN/スキン』の前に付録のように付いていた本作、わずか21分の短編だけれど怒涛のように畳みかけてくる迫力は息が詰まるようだ。 そして衝撃のラストに打ちのめされて、本編『SKIN/スキン』が始まってもすぐに気持ちが切り替わらないほどだった。

 冒頭、若い父親と幼い息子 (10歳くらいか?) の交流がじつ魅力的だ。 父親がどれほど息子を愛し、家庭を大切に思っているかが明るい色調の画面から溢れるほど伝わってくる。
 そして2人を見守るおおらかな母親(ダニエル・マクドナルド)。ありふれた家族の平凡な幸せだ。

 それに一抹、不安な影を落とすのが、野外で10数人の男女が集まって射撃の練習をする場面だ。

 父親は息子にライフルの構え方、ターゲットの狙い方、引き金の引き方を丁寧に教える。 笑顔がなんとも愛らしい息子は、オモチャをいじるように無邪気な顔で、見事に的を射抜く。

 得意気な父親、囃し立てる仲間たち・・・、みな笑いさざめき楽しそうだけれど、彼らを包む不穏な気配が気になる。 ・・・不安は徐々に高まり、一家が帰りに立ち寄ったスーパーで突然その正体が明らかになる。

 息子はレジの向こうにいる黒人男性と目が合い、男性は手に持ったオモチャを息子にかざしてみせる。微笑し合う2人。 父親がそれに気づく。鋭い目にぎょっとさせられる。

 父親は携帯で外にいる仲間に「黒人に難癖をつけられた」と連絡し、出てきた男性に数人がかりで襲いかかる。
 こうして黒人男性は、車で待っていた家族の目の前で半死半生の暴行を受けるのだ。

 不条理な暴力の激しさに身震いが出る。しかし話はこれで終わらない。
 ある日、父親は黒人グループに襲われて、どこかに拉致されてしまう。連れ込まれた室内に並ぶ物々しい機具。何が始まるのだろうと、またまた胸が苦しくなる。

 どうやら入れ墨らしい・・・。
 10日後、父親は深夜、自宅前の路上に車から放り出される。
 犬がけたたましく吠える。異変に気付き、怯えた母親が警察に連絡する。母親の恐怖の激しさに不安が高まる。

 突然銃声が響く。開いた戸から倒れ込んだ黒人・・・。
 否、それは顔も全身もくまなく真っ黒に入れ墨された父親だった。背後にはライフルを構えた息子が・・・!

 “黒い人” を何の疑いもなく撃ち殺した息子。そして彼にこのレイシズムを植えつけたのは、紛れもなく今、目の前にいる “黒い人” (=父親) なのだ。

 こうして父親は肌の色が黒いとはどういうことか、それをどのように息子に教えたのか、を身を以て知ることになる。 因果応報という古い言葉が日本にあるけれど、それを遥かに超えるレイシズムの現実。アカデミー短編映画賞を受賞したのも頷ける衝撃的なラストだった。
  【◎△×】7

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