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【 映画雑感 】No.413

女神は二度微笑む


2012年  インド  123分

監督
スジョイ・ゴーシュ

出演
ヴィディヤ・バーラン
パラムブラタ・チャテルジー
シャーシュワト・チャテルジー
インドルニール・セーングプター

   Story
 インドへ行ったまま消息不明となった夫を捜すために、ロンドンからコルカタ (旧名カルカッタ) へやって来た女 性をヒロインに、夫の失踪と地下鉄テロ事件をからませて、彼女の繰り広げる壮絶な捜索劇をスリリングに描くインド発サスペンス・ミステリー。

 ロンドンに暮らすヴィディヤ(ヴィディヤ・バラン)は、出張でインドへ行ったまま行方不明となった夫アルナブを捜すために、身重の身でコルカタにやって来る。

 地元の新米警官ラナ(パラムブラタ・チャテルジー)の助けを借りながら夫の痕跡を辿るが、どこに行ってもそのような人物がいたことはないと言われる。

 やがて、夫に瓜二つのミラン・ダムジ(インドルニール・セーングプター)という人物が浮上し、国家情報局に追われていることが判明する・・・。


   Review
 プロローグは大都市コルカタ (旧カルカッタ) の地下鉄で起きた毒ガス事件。この無差別テロで多くの犠牲者が出る。 日本人ならオウム真理教の地下鉄サリン事件を連想しない人はいないだろうと思う。電車内に横たわる被害者たちの姿に思わず目が釘づけになる。

 本編は2年後、仕事でロンドンからコルカタに出張してきた夫がそのまま消息不明になり、妻のヴィディヤが行方を探しに空港に降り立つところから始まる。

 インド女性ってどの映画を見ても、ほんとに綺麗。本作のヒロインを演じるヴィディヤ・バーランもすこぶる付き の美人だ。
 大きなお腹を抱えた妊婦のヴィディヤが、夫の足跡を辿ってコルカタを歩き回る。

 夫が宿泊していたホテル、勤務先の NDC (国立データセンター)、どこに行っても、彼が存在した記録はない、といわれる。
 捜索依頼を受けた警察は、あきらめてさっさとロンドンに帰りなさい、と素っ気ない。

 夫はたしかに存在していた。でも周囲はそんな人は初めからいなかったという。そんなことってあるだろうか。 ・・・こういう設定は、もう、まったくの私のツボ。これだけでストーリーに引き込まれる。

 夫の生まれ育った村では小学校に在籍記録がなく、叔父もそういう甥はいない、という。調べれば調べるほど謎は深まるばかりだ。 そうこうするうちに、夫に瓜二つの2年前の地下鉄毒ガス事件の容疑者ミランが浮上し、情報をヴィディヤに伝えた人物が次々に殺害される。

 若妻の夫探しが、なにやら国家規模の犯罪が関わっているらしい様相に、緊迫感が高まる。

 ヴィディヤの捜索に協力するのが警官ラナだ。気は好いけれど少々頼りなくて、ヴィディヤにちょっと「ほの字」。

 気の強い彼女に振り回されて、「警官がこんなことするか」とぼやきながら家宅侵入したり、 ヴィディヤが情報局のコンピュータにハッキングし、データを入手するのをこっそり大目に見たりする。
 どこまでも彼女につき添ういい相棒だ。

 テロ組織の殺し屋ボブ(シャーシュワト・チャテルジー)もユニークだ。気弱な表情を浮かべた小太りの中年男。 日頃は無能な保険外交員で、上司に「首だ」と怒鳴られてばかりいる。

 しかし、組織から指令のあった暗殺ターゲットに「○○さんですか」と例の柔和な微笑を浮かべて尋ね、 相手が “Yes” と答えると、いきなりズドン、これがけっこう怖い。
 持病があるらしく、正体がばれると、逃げながらぜいぜい苦しそうに息を吐く。こんなちょっとしたことが妙にリアルだ。

 ところで、ヴィディヤは夫の失踪について3つの仮説を立てる。
 1.夫はじっさいにヴィディヤを捨てて蒸発した。
 2.夫とミランは同一人物でどこかに潜伏している。
 3.夫は何かの事情でテロ組織にどこかに拉致・監禁されている。

 ヴィディヤは「3」を主張するけど、普通に考えればやっぱり「2」でしょうね。 で、夫 (=ミラン) はいつ・どういう形で彼女の前に現われるのだろう、と思うわけだけど、それがこの3つのどれでもない大どんでん返しだから驚いてしまう。

 庭木に水遣りなんかしていた情報局の元幹部ですら、途中、ちょこっと登場したことにちゃんと意味があって、一つの無駄もない構成に脱帽。

 インド映画というとストーリーには関係なく、ラストは歌と踊りのボリウッド映画、というイメージが強いけれど、本作は夫の行方を若妻が追う本格ミステリー。 妻は臨月間近い妊婦、というひねりが効いている。全く予想もしない結末に、久々、8点献上です。
  【◎△×】8

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