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【 映画雑感 】No.434

2重螺旋の恋人


2017年  フランス  107分

監督
フランソワ・オゾン

出演
マリーヌ・ヴァクト
ジェレミー・レニエ
ミリアム・ボワイエ
ジャクリーン・ビセット

   Story
 『8人の女たち』『スイミング・プール』のフランソワ・オゾン監督が、アメリカの女性作家ジョイス・キャロル ・オーツの短編小説を映画化した心理サスペンス。
 容姿は同じだが性格が正反対の双子の兄弟と出会い、妄想と現実の迷宮に迷い込むヒロインの姿を描いている。

 原因不明の腹痛に悩む25歳のクロエ(マリーヌ・ヴァクト)は、精神分析医ポール(ジェレミー・レニエ)のカウンセリングによって痛みから解放される。

 ポールと恋に落ち、一緒に暮らしはじめたある日、クロエは町でポールそっくりの男を見かける。 彼はポールの双子の兄で、同じ精神分析医のルイ(ジェレミー・レニエ2役)だった。

 ポールはなぜルイの存在を隠していたのか。 真相を確かめようと偽名を使ってルイの診療室に通い始めたクロエは、穏やかなポールと正反対の高圧的なルイに惹きつけられていく・・・。


   Review
 どこまでが現実で、どこからがヒロインの妄想なのか・・・、 ストーリーが進むにつれて幻惑の渦に巻き込まれて、見終わってからもう一度ストーリーを組み立て直し、細部を洗い直したい欲求に駆られる。
 そんな感じは同じオゾン監督の『スイミング・プール』(03) によく似ている。

 冒頭、ヒロインのクロエが美容院で黒くて長い髪をバッサリ切っていくシーンの、カメラを見つめる眼に強いインパクトを受けた。 深い淵にどこまでも沈み込んでいくような、暗く絶望的な光をたたえている。

 後で思うと、クロエの病理をうかがわせるこのオープニング・ショットこそ、映画のキー・ポイントだったことが分かる。

*     *     *

 クロエは理由の分からぬ腹痛に悩み、心理カウンセリングを受ける。
 彼女は父の分からぬ子供で、母に望まれずに生まれた。母とは疎遠で、つまり、母に愛されぬことがクロエの腹痛の原因なのかな、とはじめ私はシンプルに思っていた。

 分析医ポールの穏やかな診療 (彼女にとっては愛) がその痛みを和らげていく。

 ところが、2人が恋に落ち同居を開始した日、クロエがポールの荷物を片付けているうちに古いパスポートを見つけたことで、話がねじれ始める。


(これからさきに書くことは本作に対する私の解釈です。
見る人によっていろいろな方向からさまざまな解釈ができそうで、それも本作の面白さかと思います。
ネタバレも含めて書いていますのでご注意ください。)


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  【◎△×】7

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